ソフトバンクGがなりふり構わずに手元流動性確保、アリババにアームすら活用・・

2022年8月11日 11:22

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 ソフトバンクグループ(SBG)の22年第1四半期(22年4~6月)が、3兆1627億円の最終赤字(連結・国際会計基準)であることを公表した孫正義会長兼社長は、手持ち資金を確保していることを強調した。

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 投資会社であるSBGは、四半期ごとに収支状況を公表している。「赤字」になったからと言って、一般的な事業会社のように、資金が流失している訳ではないが、人件費などの固定費は当然必要となる。

 単純に言えば、市況の中で株式の資産価値が上昇した場合には発生した含み益を利益とし公表し、資産価値が下落して発生した含み損を損失とする。保有する株式が自社の資金だけで調達したものであれば、含み損が発生した場合には「塩漬け」状態にしておけば現ナマの動きはない。

 但し、借入や外債があれば返済や償還資金が別途必要になる。SBGの場合は、22~23年に外債の償還費用が約5200億円、7%の利回りを保証してヴィジョン1号ファンドに出資してもらった約5兆円のサウジ・UAEファンドには、年間3500億円程度の利払いがある。

 22年3月末時点での有利子負債が7兆3289億円で、金利5%と仮定すると年間利払い金額は約3700億円だから、この3件を大雑把に合計すると2年間に約2兆円の利払い資金が必要となる。記者会見で孫氏が、4.6兆円の手元流動性を確保していると語っていることから、固定費を含めたおよそ2年間の資金流失には耐えられそうだ。

 孫氏は、21年11月に公表した1年間に1兆円の自社株買いが、今までに70%を消化したとことに触れると共に、残る3000億円を消化し切れるかどうかは流動的だと述べた。理由は1兆円の自社株買いには、LTV(負債カバー率:保有株式に対する純有利子負債の割合)が25%を超えないことと、2年分の償還資金を確保できているという前提条件が付されているからだと言う。

 同時に今後1年間に、同様の前提条件を付けて4000億円の自社株買いを行うと表明した。

 孫氏が語った手元流動性の確保金額は、辛うじて2年分の償還資金をクリアする程度だから前提条件を充足させることは、今のSBGにとって軽い話ではない。20年に発表した自社株買いが総額2兆5000億円だったことを考えると、21年に1兆円になって、22年には4000億円だから、急速にスケールダウンしていることが現状を物語る。

 SBGは、傘下のビジョン・ファンドが保有する米ウーバーテクノロジーズの全株式を、7月までに売却していたことが伝えられている。7月中であれば、最安値を付けていた20年3月に並ぶように20数ドル台に低下していた時期で、8月に入って30ドル台に値を戻していることを考えると売りのタイミングで、ロスが出ている可能性は高い。

 損益は不明だが、現在のSBGにとっては現金化が可能だったことが救いだったろう。

 その他には4~6月にアリババ株や英アーム株を活用した取引で約1兆7000億円を調達したとされているから、今回行われた記者会見で孫氏が明かした4.6兆円の手元流動性の存在を推認する材料と言える。

 どうやら当座の資金繰りは出来たようだが、その分だけ含み益が取り崩され、含み損が損失として確定したことは間違いない。将来取り得る選択肢の幅は縮小したのだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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