ターク 2023年春夏コレクション - 空の通い路

2022年7月6日 07:39

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記事提供元:ファッションプレス

 ターク(TAAKK)の2023年春夏コレクションが発表された。

■移ろいと交わり、その機微

 「夏と秋と行きかふそらの通路は かたへすずしき風やふくらん」──『古今和歌集』の「夏歌」末尾を飾る一首である。美しい歌だと思う。晩夏の空にふと秋の気配の交錯を感じ取る、移ろいの機微を読んだ躬恒のこの歌は、夏と秋の歌を架橋する位置を占めるにふさわしい。そして「秋歌」の冒頭に、「秋きぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」と、やはり風の気配に秋の訪れを不意に感じる歌が続くことはよく知られている。

 今季のタークは、いわゆるシーズンテーマを設けず、ただ美しい服を作ることから始まったという。ならばこのコレクションを特徴付ける、素材の移ろい、そして重さと軽さの交わりを、躬恒の繊細さにならって「空の通い路」と形容したい。

 タークを象徴するのが、相異なる性質を有するウェアや素材を、ひとつの衣服のなかでグラデーションを織りなすように変化させてゆくアイテムである。今季は、ハリのあるリネンが薄手のコットンへと移ろいゆく。たとえばシングルブレストのテーラードジャケットは、素材の移ろいとともにシアーなシャツへと変化する。テーラードジャケットやトレンチコートのように、重厚なフォルムを持つウェアを基調としつつも、繊細に移ろう素材の質感はあくまで軽快である。

 鮮やかなグラフィックもまた、タークを特徴付けるものだ。今季にモチーフとしたのは、水面に揺らめくイメージであり、アトリエに生けた花であり、それらはいずれも身近でありながらもその儚さゆえにいとしまれる対象である。夢の中に溶け込むかのような花の姿は、軽やかなブルゾンやオープンカラーシャツなどを艶やかに彩る一方、曖昧な水鏡の模様は、タックインで着用できるほどに柔らかなテーラードジャケットやワイドスラックスなどにのせられた。

 素材は、たとえばシアーで軽快なものがシャツやパンツなどに多用されるなど、春夏らしく涼しげだ。また、ポリエチレン糸を横糸に用い、生地に熱を通さない生の状態で仕上げた形状記憶素材、ジャカードでひげやアタリから柄を表現したデニムなど、タークならではの素材の追求には余念がない。

 コレクションを構成するカラーは、全体としてレンジに富んだグラデーションを織りなしている。素材の質感を際立てるベーシックなブラックはもちろん、ヴィヴィッドなレッドやブルー、グリーン、イエローなどが、表情豊かな素材を力強く彩る一方、ライトブルーやライトグリーンなど、軽快なペールトーンも随所に随所に挟まれた。

※本記事はファッションプレスニュースから配信されたものです。ファッションプレスでは、ブランド、デザイナー情報、歴史などファッション業界の情報をお届けしています。

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