ロエベ 2022-23年秋冬ウィメンズコレクション - 服とアートの境界線

　ロエベ(LOEWE)の2022-23年秋冬ウィメンズコレクションは、“シュールレアリスム＝超現実主義”をフィーチャーした世界を描く。前シーズンでもアートに基づいたアイディアはロエベを構成する重要な要素であったが、今季は前シーズンよりも一層、アートの側面が色濃くなったように感じられる。

■曖昧になっていく服とアートの境界線

　ランウェイ序盤に登場したカクテルドレスは、風に揺られる美しいドレープに目を奪われる……と思いきや、実はそのドレーピングはすでに象られたもの。これと同様に、体のラインに沿うはずのトップスはあえて硬質的な素材を用いてあらかじめ身体のフォルムを定義し、なめらかなシルエットでありながらも極めて彫刻的な要素をもっている。

　おそらく通常の服とは紐づかないであろう装飾性も今季の特徴。例えばドレスの中には、立体的な車やピンヒールのパンプスが埋め込まれ、歪なフォルムとともに存在感を放っている。ベアトップの胸元は、濃厚なリップカラーをのせた“セクシーな口元”を彷彿とさせる。

　トロンプルイユの技法も冴えわたり、本物の身体と偽物の身体の境界線、立体的な服と平面的な服の境界線は曖昧となった。また、身体をデザインとして捉える意味で、乳頭はひとつの大きな意味を成し、トロンプルイユの中で風船の結び目がそれを表現している。さらに言えば、その風船は随所に存在感を表し、時にはドレスの装飾として、またある時にはエレガントなサンダルのアッパーとして配されている。

　芸術を彷彿とさせる服には、シューズやバッグもオブジェのような風貌がお似合いだ。特に、ロエベのアイコニックな「フラメンコ」バッグにそのまま足を通すかのようなシューズが目を引いた。手元を彩るバッグには「パズル」もあり、今季はマットなテクスチャーとチェーンのディテールで装い新たに登場している。