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安いEV車には訳があるはず
Photo:日産リーフのリチウムイオンバッテリー(日産自動車発表資料)[写真拡大]
●安い物には訳がある
「外国製」のEV車が、補助金を除外しての比較で、「車両価格」が安いと喧伝される。そして日本の輸送業大手が、中国製のトラックを導入しようとしたりする。
【こちらも】中国製EV乗用車に乗りたいか
しかし、「安い物と化け物は無い」と言われる様に、安い物には安い理由があるはずだ。3重の安全装備を2重にするだけで、つまり3つ目の安全装備をコストダウンの為に装備から外すだけで、値段は下がる。
●一般的な商品での比較
57カ国を対象とした、国別の「ビッグマック価格ランキング」を見ると、1位スイスの804円から3位アメリカの669円、11位イギリス555円、26位中国442円、33位日本390円、48位台湾311円、51位インド293円までの価格差がある(2022年2月5日 1$=115.23円)。
これは食料品でもあり、国家間での貧富の差も影響する部分が大きいだろうと考えられる。
●スマホの場合
しかし、iPhone 13mini 128Gの例を見ると、日本が11万7,480円、アメリカが12万1,559円、台湾13万1,409円と、比較的価格差が少ない。別の資料を見ても、アメリカは州による相違で9万4,529~10万5,400円、台湾10万0,809円、中国10万2,005円、インド11万8,405円である。
工業製品の場合、各国の生活水準等々の指標を勘案しても、本来なら、極端な価格差が生じるはずは無い。
●価格差発生の要因
S社のエレベータが悲惨な人身事故を起こす事件があり、その際に指摘されたのが、国産機と較べると、例えば国産が3重の危険防止目的の予防措置をとる部分が、2重だといった、相違があったと聞く。
単純な確率論で考えると、その部分に「1000回に1回不都合が発生する」と仮定すれば、2重の安全装置なら100万回に1回起こる。しかし3重なら、10億回に1回となる。
日本の様な「安全に対する異常な位の意識」に欠ける諸外国なら、コスト削減検討の際に「一定の安全措置は備えたから、3重目はコストを勘案して省略しよう」と、「1ランク下げて2重でOK」だとする決断をするだろう。
これだけで価格も下がるが、安全率は極端に下がる。
●同じ条件なら価格差は生じない
何かの品を「安くする」=コストダウンを考える場合には、革命的な新技術が発見されない限り、「原材料費を削減する」、「工程を簡略化する」、「流通コストを削減する」等の方策しか無い。
中国の綿製品で問題になっているのは、ウイグル族に対する強制労働だ。労賃が安ければ、製品も安価に供給できる。
同じくレアアースで中国が優位に立っているのは、製造工程で環境に対する配慮に欠け、労働環境にも配慮していないことが、優位性の獲得に寄与しているからだ。
地球環境や労働者の人権への配慮を無視すれば、当該部分に必要とされるコストが圧縮され、「まともな国の製造原価」とは圧倒的な優位に立てる。
「知財なんぞは無視して模倣全開」で、「新しい交通システム擬きの物」をでっち上げて、事故が発生した際に、事故車両を人目に触れない様に埋めてしまって「無かったことにしよう」とする国では、安価に生産が可能となるだろう。
日本は、不具合が発生すれば徹底的に原因を追究して、再発防止に全力を挙げる国である。高価になるのは、それなりの研究開発費を投じ、充実した装備をするからなのだ。
●高価でも安心できる国産車
日本の技術は、東日本大震災での津波による大災害に際して、大容量の車載バッテリーを搭載したHV車やEV車で、乗員・乗客に1人も感電死者を出さなかった。
EV車である日産リーフの場合、2010年12月の初代リーフ発売から10年が経過した2020年12月時点でグローバル累計販売台数が50万台となった。
その間、世界59の国と地域で、延べ180億キロ以上を走行して、バッテリー起因による火災事故は発生していない。
EV車よりも圧倒的に台数が多いHV車も、大容量バッテリーを搭載しているが、全て問題は無かった。
これに対して、単に新車展示場に並べただけで、自然発火するEV車を平気で生産する国との間には、決して超えられない技術の格差が存在する。
『中国製EV車に乗りたいか』(1月19日付)でも述べたが、「自動車を製造する」ということは、技術以外に、倫理観も欠くことは出来ない。「事故発生確率」を下げる努力をするのでは無く、「事故発生をゼロにする」姿勢で取り組むことが求められるのだ。
こんな事実関係も認識した上で、EV車選択には慎重にあたりたいものである。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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