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「大間のマグロ」に漁獲枠破りの疑惑、息を潜める(?)違反漁業者! (下)
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19年の初セリは、因縁の築地市場から移転して初めて迎えた豊洲市場にとって特別なセリだった。青森県大間産のクロマグロが、史上最高値の3億3360万円で落札された背景には、そんな豊洲市場に対するご祝儀の意味があったのかも知れない。
【前回は】「大間のマグロ」に漁獲枠破りの疑惑、息を潜める(?)違反漁業者! (上)
278キロの巨体を誇るクロマグロは、単純計算で1キロ120万円になる。100g~200gという庶民の感覚に換算しても12万円~24万円になる。頭や骨、尾や皮を除くと可食部分は減少するので、流通価格が更に何割かアップすることは避けられまい。
購入対象として考えることすら有り得ない価格に圧倒されるばかりだが、この日のセリで最高値を競ったのは水産仲卸の「やま幸(ゆき)」とすしチェーンの「すしざんまい」の運営会社だ。
どんな業態でも、1キロ120万円のマグロで商売することは出来ない。「すしざんまい」にとっては全国に展開するネットワークのPR効果に期待しながら、見栄を張った上にご祝儀というところだろう。最後まで競った「やま幸」のスポンサーは明らかにされていない。
2022年の初セリで、大間産211キロのクロマグロが1688万円で落札された。3年前の落札額と比較すると価格は約20分の1となり、キロ単価は8万円だから随分安くなったように錯覚するが、これでも100~200グラムで8000円~1万6000円になるから気軽に口に出来る価格ではない。この時はすし店「銀座おのでら」を運営する会社が、水産仲卸の「やま幸」と協力して落札したと伝えられた。
セリ値の低迷原因を、長引くコロナ禍が外食需要を低迷させていることに加えて、未解決の脇売り問題が心理的な重しになっていると考えても不思議ではない。違法な脇売りを解明するために、告発という最終手段を取ることは可能だが、漁獲枠の設定を嘲るような違法行為の実態が明らかになれば、日本の漁業に対する国際的な評価は地に落ちる。漁獲枠の設定そのものに対する疑問すら沸き起こる懸念もあるだろう。
こんな騒ぎが回転ずしにまで飛び火した。3月15日にスシローの運営会社FOOD&LIFE COMPANIESのHPに「食材に関するお知らせ」が掲載され、フェアで提供した「大間産まぐろ」が、国の指定する漁獲枠規制を遵守したものかどうかを確認していると告知していた。
2月下旬に開催された「絶対王者スシローの鮪」フェアのPRでは、「凄腕バイヤーが在籍するスシローだからこそ」と大見えを切っていた手前、バツの悪さと無念さが滲み出ていたのは止むを得まい。3月31日に同HPに掲載された「食材に関するお知らせ 続報」によると、「調査の結果、国の指定する漁獲枠規制を遵守したものかどうかを確認できなかった」旨が記載されている。このケースの場合、「確認できなかった」こと自体が、違法性を暗示していると言えるだろう。
漁獲量の報告漏れが把握されて以後、水産庁や青森県の動きは判然としないから、実態解明が進むかどうかは分からないが、今後大間の漁業者の動向が注視されることは間違いない。「大間のクロマグロ」が豊洲市場以外に出荷されること自体が、話題を集めて詮索されること必定だろう。「大間のクロマグロ」の価値は変わらなくとも、関係者を見詰める周囲の目は明らかに変わった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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