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「大間のマグロ」に漁獲枠破りの疑惑、息を潜める(?)違反漁業者! (上)
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21年11月に東奥日報が「大間マグロ漁獲無報告、一部が脇売り」と伝えたことから、漁獲枠を無視した不法な操業が行われている疑惑が一気に広がった。
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産卵場が日本近海にあるとされる太平洋マグロは、世界的な寿司ブームの高まりもあって乱獲が進み、資源枯渇が懸念されてきた。最大の消費国であり生産国でもある日本は、環境保護団体や米国政府の非難を受けて、資源保護のための漁獲量規制に10年前から取り組んでいる。
努力の結果、資源の回復が見られるとして21年12月には中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が、日本近海での30キロ以上のクロマグロ(大型魚)の22年漁獲枠を15%増やす決定をした。それに伴い水産庁が都道府県別に割り振る漁獲可能量(TAC)も増加する。
一般に、漁業者は漁獲したマグロを所属漁協に出荷、各漁協は集計した水揚げを県に報告し、水産庁の漁獲枠管理に使用される。だが、漁業者は必ず漁協を通す訳ではない。自分に有利な販路に流すのは漁業者の自由だ。
問題は漁獲制限が設けられている魚種の場合、漁協を通さずに販売した数量を、漁業者が漏れなく県に報告しているのかということだ。東奥日報が「一部が脇売り」と報じているのは、漁業者から報告されていない闇出荷があることを意味している。
漁業者が水揚げしたマグロを脇売りした場合、当該漁業者が漁協に正直な届け出をしなければ、実態を把握することは出来ない。疑惑報道を受けた青森県が、漁協を通して漁業者に報告の修正を求めたところ、21年6月~9月までの期間に約14トンの報告漏れ(?)が判明した。
ところが、昨年9月に豊洲市場で扱われた青森県産のクロマグロが60トンだったのに対して、同時期に静岡市中央卸売市場で扱われた青森県産のクロマグロは28トンに上る。日本を代表する市場の半量に迫るほどの取引が、遠く離れた静岡県で行われていたこと自体に不自然さがアリアリな上、豊洲市場での取引価格がキロ単価3600円ほどだったのに対して、静岡市中央卸売市場ではおよそ1500円だった。
後ろめたい闇ルートの商品に、ダンピング価格が設定されるのは言わずもがなだから、背後に違法行為の存在を感じさせる要素は充分だ。
この情報に接した青森県が漁協に指示して調査したところ、青森県の14人の漁師と5社の業者が漁獲と出荷に関与したことが判明し、水産庁も状況を分析中だという。
水産庁によれば、昨漁期年(21年4月~22年3月)に青森県への配分された大型魚の漁獲枠は543トンで、そこから253トンが大間漁協に配分されている。現在の漁業法によると、漁獲データを報告しなかったり、虚偽報告したものには6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるが、22年1月末現在で適用された例はない。
漁獲枠破りが報じられた時期に、漁獲枠の拡大が報じられたことは、大間の漁業者にとって皮肉以外の何物でもないだろう。(続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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