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年20%近くの成長率で拡大するIoT市場 高度な技術力で存在感示す日本メーカー
IoT市場においては残念ながら、他国よりも一歩出遅れてしまっている感の強い日本だが、パワーデバイスの開発競争においては、逆に一歩リードしているといっても良いかもしれない[写真拡大]
アメリカの市場調査レポートプロバイダーReport Oceanが2022年2月に発行した最新のレポートによると、近年需要が伸びているIoT市場は依然として好調で、2030年までの期間において19.67%以上の成長率で拡大すると予測している。
日本のIoT市場は、世界の先進各国に比べて成長率と普及率が低いといわれてはいるものの、共働き世帯の増加や少子高齢化などの社会背景から、家事の負担を減らす目的などでスマート家電を導入するニーズが増えており、今後の成長は十分にも込めるだろう。また産業分野でも、主に大企業や製造業を中心に、業務効率の向上やコストの削減を目的とした導入が着々と進んでおり、AI同様、今後の事業には欠かせないものになることは間違いない。
しかし、そんな順調なIoT市場にも世界共通の大きな課題がある。機器が増加することでサーバーシステムなどへの負荷も増大しているのだ。これを解決するためには、システムの電力変換効率の向上や装置の小型化などが急務であり、その中核を担うパワーデバイスにもさらなる進化が求められている。
IoT市場においては残念ながら、他国よりも一歩出遅れてしまっている感の強い日本だが、パワーデバイスの開発競争においては、逆に一歩リードしているといっても良いかもしれない。
日本の電子部品企業の中でも、これまで主流だったSiデバイスに変わるSiCデバイスの開発で度々、世界初の技術を発表するなど、存在感を強めるローム株式会社が、今度はGaNデバイスでも画期的な製品を発表したのだ。
同社は、業界をリードするSiCデバイスや特長ある各種Siデバイスの開発、量産を進めるだけでなく、各種アプリケーションに対してより幅広いパワーソリューションの提供を可能にするため、中耐圧領域での高周波動作に優れるGaNデバイスの開発も行ってきた。
GaNデバイスは各種電源の低消費電力化や周辺部品の小型化に貢献するデバイスとして注目されているが、一般的な200V耐圧以下のGaNデバイスは、動作に必要な電圧(駆動電圧)と、デバイスに印加してよい上限電圧(定格電圧)との差が1Vと非常に狭かった。デバイスの定格電圧を超える電圧が印加されると、劣化や破壊など信頼性に関する問題が発生する可能性があるため、駆動電圧と定格電圧には余裕を持った差が求められており、GaNデバイス普及の大きな足枷となっていた。
同社はこの課題に対し、独自構造の採用によりゲート・ソース定格電圧を一般的な6Vから8Vまで高め、業界最高の堅牢性と安定性を確保した、つまり実用に足る信頼性と扱いやすさを備えた新しいGaNデバイスの開発に成功し、量産体制を確立した。今後、「EcoGaN™」シリーズとしてラインアップを拡充していくという。また、GaNデバイスの周辺部品として、高電圧から低電圧への電圧変換を「1つの電源IC」で構成可能にする「Nano Pulse Control™」をはじめとする同社のアナログ電源技術を生かした制御ICや、それらを組み込んだモジュールの開発も進めており、今後、GaNデバイスの持つ性能を最大限に引き出すパワーソリューションの誕生が見込まれる。
これらの技術が国内だけでなく世界も拡がっていけば、IoT機器の省エネ化、小型化に寄与することはもちろん、持続可能な社会の実現にも大きく貢献するだろう。成長するIoT市場で、日本の高度な技術力の存在感を示して欲しいものだ。(編集担当:今井慎太郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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