最古の家禽はガチョウだった? 7000年前の痕跡、北大などの研究

2022年3月9日 10:52

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田螺山遺跡で確認されたガン類の幼鳥(1-4)と在地性の成鳥(5-8)の骨。(画像:北海道大学の発表資料より)

田螺山遺跡で確認されたガン類の幼鳥(1-4)と在地性の成鳥(5-8)の骨。(画像:北海道大学の発表資料より)[写真拡大]

  • 現代のシナガチョウ。(画像:北海道大学の発表資料より)

 従来の知見では、最古の家禽はニワトリで、それも紀元前2千年以降のことと考えられてきたのだが、どうやらその情報は大きく覆されることになったようだ。中国の長江下流域にある田螺山遺跡から、約7千年前の、ほぼ確実に飼育されていたものと見られるガンの仲間の骨が見つかったと言う(なお、家畜化されたガンをガチョウと言う)。

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 鳥類は哺乳類に次いでヒトの主要な家畜動物であり、単純に個体数だけを言えばニワトリを筆頭にして哺乳類家畜の5倍の頭数が飼われている。しかし、哺乳類の家畜化の歴史に比べると、その研究にはさほど重きが置かれていなかった。今回は、それに光を当てる発見となる。

 北海道大学総合博物館の江田真毅准教授らが参加する国際研究グループは、以前にもガンの幼鳥をこの田螺山遺跡で発見していたが、近年新たな標本がさらに発見されたため、それらが家畜化されたものであった可能性についてより本格的な研究と検討を行った。

 ガン類は本来渡り鳥であり、繁殖地のほかに越冬地を持つ。この長江下流域は越冬地ではあるが、繁殖地は1500km以上北に離れた土地にしか見られない。

 いくつかの骨について子細に調べたところ、まず1体、繁殖地からこの地まで飛来したと考えるにはあまりにも幼すぎる個体の骨が見つかった。

 また大人の骨についても、数世代に渡って野生群から隔離され、飼育下にあったのではないかと見られる形態上の特徴があった。さらに骨の化学的な分析によっても、渡りをするガンとは異なり、この地で獲れるコメを主に食べて生きていた可能性が強く示唆されたと言う。

 よって本研究は、既存の最古の記録であった「ガンの飼育化は3500年ほど前にエジプトで始まった」とする定説を覆し、さらには「ニワトリが最古の家禽である」という仮説をも上書きして、「ガチョウが最古の家禽」であったという可能性を示したのである。

 なお研究の詳細は、米国科学アカデミー紀要に、2022年3月8日オンライン公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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