牛丼並みの手軽さが前面に出て・・・リースバックシステムの罠 (下)

2022年2月25日 16:42

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 リースバックの利用を検討する上で注意すべき項目の3つ目は、売却価格が一般的な取引の7割程度に抑えられる点だ。あくまでもリースバック運営会社が事業として行っているので、数年後の転売時に利益が見込めない価格で購入する筈がない。平たく言えば売却時には「叩かれ」て、買戻しを希望する時には売却した価格より高くなる。

【前回は】牛丼並みの手軽さが前面に出て・・・リースバックシステムの罠 (上)

 例えば、オーナーが時価2000万円の自宅をリースバック運営会社に売却すると、オーナーは1400万円の売却代金を手にする。数年後に気が変わって買戻しを申し入れたとしても、1400万円で買戻せるわけはない。その時点での時価額として2000万円前後程と、経過年数分の利息を加算した金額が手数料と形を変えて請求される。

 少なくともオーナーが手放した価格よりも、(2000万円-1400万円=)600万円の負担増となる金額が請求されるという覚悟は必要だ。自宅を売却するほどの人が、数年後まで売却代金全額をそっくりそのまま保管していることだけでも考えにくいのに、請求される金額が更に600万円加算した2000万円だとしたら、支払いすること自体が夢物語になってしまう。結局、買戻し金額が折り合えなくてトラブルが発生するか、泣き寝入りになる。

 リースバックの1番の問題点は、「自宅に住み続けられるから、住み替えを考える必要がない」と思わされてしまう点だろう。現在と大差ないと誤認して、まるで牛丼でも発注するかのような気楽さで契約する。売却と同時の立ち退きがセットになっていれば、「そこまでして売りたくない」と思う人でも、「住み続けられるなら・・・」と判断が甘くなってしまう。

 リースバックのメリットと伝えられる中に、毎月の支払いが一定額になる点がある。所有していると支払いを迫られる修繕費や固定資産税、火災保険などは毎月の家賃(リース料)に含まれてしまうので、やや割高になる家賃を支払う以外の住宅関連費用を支払うことはない。毎月一定額を支払うという分かり易さはあるが、廻り廻って家賃に加算されているので、支払いが減ったのではなく得をしているわけでもない。

 リースバックを利用する場合には、こうした点を十分理解することが大切だ。

 リバースモーゲージの場合は、担保評価額の50~60%が融資限度額という枠が決まっている。しかも、担保評価額は数年ごとに再評価されるので、担保評価額が引き下げになるリスクもある。その時点で一部返金を迫られるリスクを考えると、限度額いっぱいの借入は避けるべきだろう。支払うのは利息相当額のみなので、負担感が低いことも分かり易い。

 例えば、リースバック事例と同様に担保評価額が2000万円の自宅を担保にして、50%の1000万円を借入した時の金利が3%だったとすると、オーナーは毎月2万5000円程の金利を払い続けるだけで借入金の返済を考える必要がない。借入できる金額が担保評価額の一定割合である点も、リバースモーゲージ契約が満了する場合に売却価格から借入金額を控除した残金が相続人に支払われるので、不利ではない。ウィークポイントは「リバースモーゲージ」という、言葉自体の馴染み難さにあると言えるだろう。

 売却とリースバック、リバースモーゲージなど、自宅から調達できる金額にも条件にも差は様々だが、説明の仕方でオーナーの理解の幅が大きく異なるのはリースバックだ。人生で最後の決断を悔いることにならないように、それぞれの特徴をよく理解して決断すべきだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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