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ダイオーズが描く、プライム市場移行のシナリオ
12月15日のマーケット欄で日経新聞電子版が伝えた『東証1部146社「プライム」選ばず 日本オラクルや白洋舎』と題する配信を受け、滝沢鉄工所が「スタンダード」を選択した「理由」を記し「ひとつの選択法」と考える旨を記した。
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直後、オフィスコーヒーなどで知られるダイオーズ(東証1部)から、『新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画について』とするニュースリリースを受信した。東証は来年4月、市場改革を実施する。同時に東証1部企業にプライム移行に伴う「基準適合」について、猶予期間を与えるとしている。
ダイオーズは2026年3月期の中期経営計画終了時までに基準の適合化を図る計画だ、と宣言したのである。17日に、その旨を東証にも伝えた。
具体的に言うと、同社はプライム移行の基準となる「株主数」「流通株式数」「流通株式比率」では(6月30日時点で)既に条件を満たしている。「(流通)株式時価総額」「1日平均売買代金」で基準との差異がある。前者では100億円以上に対し「51億400万円」。後者は2000万円以上に対し「700万円」。一見する限り、相応の差がある。
では、中計でどんな数字が残せればプライム移行適合基準に到達できるとしているのか。
リリースでは時価総額に関しては「中期経営計画に基づく成長」「サステナビリティ経営による企業価値向上」、売買代金は「「IR活動の積極推進・情報発信の強化」「株主還元策の周知」の取り組みを26年3月期末まで推進・・・」とした上で、こう具体的に言及している。
中計で掲げられた目標値は「売上高385億1000万円(前3月期比165.1%増)、営業利益28億1000万円(15億4000万円の損失)、純益19億6000万円(22億5000万円の損失)」。時価総額クリアを勘案すると現時点の流通株式数509万7322株に対し、当期純利益率5%超が必須条件となる。
リリースでは「コロナの影響を受けていない時期の純利益率は平均4%」とし、これを「5.1%に拡大する」としている。具体的には「19億6000万円の純益」を見込むと言うのだ。その理由を要は「企業価値の向上」とした。異論をはさむ余地はない。
ただ私はダイオーズが、「米国市場の拡充に注力していること」を承知している。「プライムにこだわる理由の1つは米国市場への影響もあるのか」と、広報の窓口役である社長室室長に問うた。返ってきた答えはこうだった。「ご指摘の通りと思料する。米国を含めた海外事業の発展に注力することで、企業価値の向上を目指す」。
意地悪な質問もぶつけた。「中計の数値が未達の場合は・・・」。返ってきた答えは、「取引所の見解はまだ明確になっていないが、弊社としては全力で目標達成に取り組んでいく」。
前期の状況をベースに考えると、決してバーは低くない。が、確かに中計で掲げた数値をクリアすることで株価の反応も含め、時価総額基準を手元に引き付けることは可能。今期以降の収益動向を、まずはしかと見定めたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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