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通期予想を「売上減、営利増」とした、ファーストブラザーズを読み解く
通期予想を「売上高減額・営業利益増額」に修正した、興味深い?企業に出会った。ファーストブラザーズ(東証1部)。吉原知紀社長をはじめ現役員陣の多くを占める旧三井信託銀行(現、三井住友信託銀行)出身者を中心に、2004年に設立された。
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「興味深い」としたのは展開する事業が孕む収益構造の在り様。前11月期の「21.2%減収、26.6%営業減益」に対し今期は、「92.4%増収(301億円)、86.1%営業増益(47億3000万円)」で立ち上がった。が、11月26日の時点で売り上げは「70%増収(266億6800万円)」に減額修正する一方で、営業利益は「92.4%増益(48億9000万円)」に上方修正した。
そしてその背景を、「ポートフォリオの入れ替えの結果。今年度の物件売却は、当初計画していた売却予定物件を、より売却粗利率の高い物件に入れ替えたことから、当初計画に比べ少額な売却額(売上高)にもかかわらず概ね当初計画の売却収益(売却粗利)を達成した」と発信した。
ファーストブラザーズの主要事業は「投資銀行」と「投資運用」。前者は一口で言うと「首都圏を中心とした賃貸ビル・商業施設を自己資金で取得。ポートフォリオを積み上げる。ポートフォリオの入れ替えに際し得た(物件売却)利益で新たな投資物件を取得する。要約すると私募ファンドの運営。
ちなみに前期はコロナ禍の経済活動の停滞が影響し入れ替え・新規購入の実行が長期化した。売却額・売却利益ともに19年比『24.3%減収、27.5%営業減益』となった。後者はアセットマネジメントの受託。前期は新規受託及びアセットマネジメントフィの大幅増で「261.6%増収、430.6%営業増益」となった。
(賃貸物件に)自己勘定で投資。私募ファンド(REIT)orJREITに組み込む事業はファーストブラザーズに限ったものではない。賃貸不動産をコアにしたJREITも少なくない。購入した物件の価値を高め、既存の組成物件と入れ替えファンドの利回りを高めていく。事業構造的に、同様の事由が起こりうる可能性は同業他社も孕んでいる。
その限りでは、不安感の類はない。ファーストブラザーズも目利き人が物件を発掘し付加価値を高めて・・・ということだろうから「?」を呈する余地もあるまい。現に今後について「市況が軟調なホテルなどの物色にも、金融緩和(低金利)を背景に注力していく」としているが、ある意味で先を見据えた「正論」と言えよう。
差し替え物件/配当率の投資家に対するディスクロージャーは当然行われる。だが投資家サイドから見た時、投資対象株としてどうだろうか。ここ1年あまりは、900円台から1100円台前半で推移している。よく言えば「下値ゾーン買い・上値ゾーン売り」で対応することが可能。が、パフォーマンスを追う魅力には乏しい。時価の予想税引き後配当利回り(2.4%弱)に軸足を置いて構えろ、ということなのだろうか。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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