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今期計画「上方修正」を機に、名門:パイロットを再考してみた
2021年7月に開設したWebメディア『かく、がスキ』(画像: パイロットコーポレーションの発表資料より)[写真拡大]
パイロットコーポレーション(以下、パイロット)が8月10日に発信した今2021年12月期の上方修正には、一口で言うと驚かされた。前期の「16.0%の減収、25.3%の経常減益」に対し今期は「5.6%増収、4.5%経常増益」計画でスタート。「経済動向の立ち直りで筆記具部門(総売上高比率約90%)の需要回復の結果」と認識した。それが中間期開示と並行し、「12.5%増収(980億円)、18.4%経常増益(170億円)」に上方修正したのである。パイロットでは背景をこう説明した。
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「主力のステーショナリー(文房具)事業が、主要海外市場のコロナ感染状況からの想定以上の回復に加え為替の影響(円安)もプラスに働いた。売り上げ増に伴う利益増(経常利益+20億円)」。
株価はどう捉えたのか。1月安値2903円から総じて緩やかな右肩上がりで、上方修正発表後に4535円(9月)まで上昇。時価は4100円台と踏ん張っている。兜町筋は、「国内経済の回復傾向がトレンドとなれば・・・と株価も構えている」とする。
適切な表現でないかもしれないが、パイロットの収益の豹変には時として驚かされてきた。例えばバブル期。1989年12月期(当時の社名はパイロット)、「87%営業増益、6.6倍最終利益増」。当時の会社四季報は業績欄を【復配】の見出しで、「電算用品が電子文具中心に25%増。マーキングペン、アルミ建材も続伸。輸出好転。・・・本社ビル移転の交換差金25億円で累損(17億5000万円)一層・・・4年ぶり復配へ」。累損を抱えた名門の「一機河成の復配」に驚いたことを記憶している。
筆記具世界NO1を自負する、パイロット。「自負する」としたのは世界的なデータがなく、パイロットが自社調べで「2018年に筆記具で世界一位の売上高に」としているからだ。確かに18年時点で「販売国・地域:190以上」「世界18販売拠点・4工場」は、大手と目されるメーカーを調べても一歩抜きんでている。
いまでこそ使う頻度は減ったが、ワードを叩くようになるまで原稿書きはボールペンだった。右手中指上部左側に出来る「たこ」を誇らしく感じていた(単に筆圧が高いせいだったのだろうが)。
30年近く前「ドクターグリップ」と呼ばれる太軸グリップのボールペンを、パイロットが商品化した。書き心地が良かった。楽だった。腕の疲れが、肩こりが半減した思いだった。以来、ボールペンはパイロットと決めている。
パソコンが当たり前の時代。筆記具メーカー:パイロットはしっかり生き続けている。そして筆記具「トップ」を自認するだけのプライドは、脈々と生き続けているようだ。詳細(具体例)はHPを覗いてもらうとして、Webメディア「かく、がスキ」を開設している。手書きの醍醐味を著名人のインタビューなどで紹介している。
名門の維持は「書く」>「叩く」を、実現しうるのだろうか。財務諸表を見て前記のバブル期の「累損一掃」に対しいまは、有利子負債の8倍強の利益剰余金を有する企業と気が付いた。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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