しまむらの「存在感復権」を実現した3つの要因

2021年11月30日 15:36

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 実用ファッション・衣料のしまむら(東証1部)の収益の復活は、どう捉えるべきか。

【こちらも】前期利益V字回復のしまむらだが、今後に「?」が払拭できない理由

 2020年2月期は「5%の減収、10%の営業減益」と落ち込んだが、前2月期は「4.0%増収(5426億800万円)、65.4%営業増益(380億2600万円)」と切り返した。そして今期も「2.3%増収、1.6%営業増益」計画で立ち上がったが、9月27日に「5.1%増収(5705億2000万円)、20.2%営業増益(456億8400万円)」に上方修正した。

 利益率の急改善の背景は、何に求められるのか。確かに小売業の足元を確認する上の指標:既存店売上高は、前2月期の第1四半期は前年同期比77.8に止まったが、第2四半期以降は回復基調に転じ通年度では102.6となっている。そして今期の上半期も111.9で通過している。

 だが主な店舗動向は、「しまむらブランド店:2店減1430店」「アベイル店:4店減315店」「バースデイ店:1店増298店」といった具合に単に「売り上げ増に伴う利益増」とは言い切れない。では何が貢献したのか。以下の3点に集約されよう。

 『粗利益率改善』―周知の通り「(売上高-売上原価)÷売上高×100」で算出される。要は売上原価の引き下げが顕著なら、粗利益率は高くなり営業利益の伸びを実現する。

 しまむらの商品は概ね、アパレル問屋から仕入れられている。そうした状況下で売上原価を引き下げるには、短期納入体制が不可欠。20年11月17日付けの日経新聞が、「しまむら 発注から納品まで大幅短縮」という見出しで「需要に応じて売れ筋商品を投入できる短期生産を導入。結果、若者向け商品を30%にまで拡大した」と伝えている。俗にしまむらの商品を定期的にチェックする「しまラー」+サプライヤーの力を活用し、売れ筋商品を充実させる体制を整備したということだ。

 『PB商品の充実』―PB商品の魅力は、利幅の厚さにある。拡充に注力した。自社開発&サプライヤーとの共同開発。前期末でそのアイテム数は、「レディース:5」「メンズ:2」「キッズ:3」「インナー:2」「リラックス:4」にまで広がっている。

 『EC本格化』―スマホで注文し店舗での取り置きが行えるアプリ「しまコレ」の取り扱い縮小・中止し、「EC拡充策」に踏み切った。20年2月期のEC売上高は約17億円。これを「22年2月期には50億円、24年2月期には約120億円まで引き上げる」としている。

 言うは易いが行うは難い、であろう。が、低迷期にアナリストらを中心に「復活に必要なポイント」と指摘されてきたことでもある。本稿が読者諸氏の目に触れる頃には「前号」になっていようが、会社四季報・秋号は材料欄の見出しを【EC強化】とし、「ベビー服:バースデイECを9月開始、全国のグループ店舗で受け取り可能にして利便性訴求・・・」と記している。

 3500億円余りの利益剰余金を有している(無借金)。一層の巻き返し策の資金は十分と思うが・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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