5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (62)

2021年10月13日 07:31

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 「所作が美しい人=思考もスマートな人」、「話が面白い人=プレゼン上手な人」、「美人=心も美しい人」、「高学歴者=昇進が早い人」、「高身長の人=能力も高い人」、「優しくしてくれた人=性格が良い人」、「有名企業勤務の人=いろいろちゃんとしている人」、「英語が堪能な人=ずば抜けて仕事ができる人」……と、私たちは「人物のある1面が優れていると、その他の面もきっと優れているに違いない」と思い込み、その人の全体を過剰に高く評価してしまうことがあります。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (61)

 「たった1つの情報(ファクト)」から想像して、その人を美化してしまう人は少なからずいます。所作の美しさは素養だったり、マナー教室でのトレーニングや厳しい家柄に育った賜物だったりするわけですが、イコール「思考もスマート」には直結しません。飛躍し過ぎで、相関関係・因果関係は一切ありません。

 このように、他者の際立った1特徴に引きずられ、他の特徴について正確に評価できなくなる現象を「ハロー効果」と呼ぶそうです。「後光効果」とも言うのですが、行動経済学では「固着性ヒューリスティック」の1つとされています。

 たとえば、TVCMに人気タレントが起用されるのは、この「後光効果」を利用するためです。「タレント(インフルエンサー)の印象=ブランド(商品)の印象」となり、一定期間、タレントとブランドは一蓮托生の関係になります。ゆえにタレントが不祥事を起こせば、関係は解消、即契約解除となり、その後、損害賠償を請求され、ブランド毀損の責任を負うケースもあります。

■(64)何かに規定されたくなければ、自分を常時更新し続けろ

 ビジネスパーソンのキャリア形成においては、「1つの評価(側面・イメージ)」を「全体評価」としてキャラ付けされないように、ご自身のブランディングには注意しなければなりません(その側面が強烈なスパイクであり、武器になる場合は別です)。

 乏しい情報で短絡的にご自身を規定されたくない人は、規定する人間に追いつかれないスピードで自分を常時更新していくこと。そして1年後、3年後、ご自身の変容(進化)にきっと気づくはずです。

※参考文献:「サクッとわかるビジネス教養 行動経済学」

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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