PayPayが手数料有料化へ 楽天ペイ・auPAY・d払いは新規加盟店を無料に!

2021年9月18日 16:19

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 PayPayは8月19日のオンライン会見で、今まで無料にしてきた中小加盟店向けQRコード決済手数料を、有料化すると発表した。

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 創業間もないPayPayを一気に社会に認知させたのは、18年12月2日からスタートした「100億円あげちゃう」キャンペーンだろう。そのインパクトの大きさは、19年3月末までの最大118日間(原資がなくなれば終了)と設定されていたキャンペーンが、僅か10日間であっという間に終了したことに象徴される。期間中の利用者は190万人だったそうだが、コスパは兎も角として社会的な認知を受けるという意味では、最高のデビューを飾ったことは間違いない。

 その後に行われた同様のキャンペーンは、初回の教訓が生かされて還元額に上限が設定されるなどインパクトは低下したが、初回で知名度を一気に上げて2回目以降は利用者の拡大を進めるという意図に沿ったものだったようだ。

 同社によると、QRコード決済市場でPayPayは決済額ベースで68%、決済回数ベースで66%のシェアを占めているそうだから、目論見通りに社会に浸透したとの自信を持って、当初から告知していた通り3年目に手数料を有料にして、「ビジネスを始めます」というところだ。

 この3年間の最終赤字を累積すると1931億円になると言う。ちなみに、「世界一幸せな国」と言われるブータンの歳入は2016年で約640億円だったから、3年間で1931億円という金額はブータンの国家予算に相当する。これだけ巨額の損失を計上したのは、世間の注目を集めた「100億円あげちゃう」キャンペーン以外にも、考えられるあらゆる手法で認知度の向上に努めたからだ。

 僅かな売上しか計上出来ていない同社が負担出来る金額ではないから、ソフトバンクグループ、ソフトバンク、ヤフーという親会社と事前に概要をすり合わせ済みの赤字で、増資と減資により資金支援を受けた格好だ。
 
 計算違いがあったとすると、競合する「楽天ペイ」「d払い」「auPAY」などが新規加盟店の決済手数料を無料にすると決定したことだろう。PayPayが3年間に1931億円を注ぎ込んで、趨勢がPayPayに傾いていることは疑いようもないが、ライバル各社は白旗を上げるどころか、未だにファイティングポーズのまま意気盛んだ。

 QRコード決済業者が、適正な利益を確保しながら利用者を囲い込むことは至難だ。今まで決済業者が行って来た「撒き餌」のようなサービスに敏感になり過ぎた利用者は、決済業者によって利に聡(さと)く育てられて来た。今後は利用者が決済業者を選別する番だ。

 中小加盟店にとっては、正念場が到来したようなもので、手数料については腹を括っている先が多いと思われるが、問題は売上金が店舗に入金されるのが月に1回に限定されているところに不満を抱く加盟店の存在だ。決済サービスの利用者が多い店舗ほど、運転資金に流用出来ない売上金が嵩(かさむ)むことになる。

 コロナ禍で業種・業態ごとの売上の振幅は大きくなっているから、資金繰りが厳しくなってしまう加盟店は少なくないだろう。

 そんな加盟店に、PayPay以外の決済業者が打ち出した「新規加盟店決済手数料無料」は、どう響くだろうか。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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