5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (60)

2021年9月10日 07:37

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 今日は、「ヒューリスティック(簡便法)」について少し話します。ヒューリスティックとは、人間の意思決定をサポートするように働く思考プロセスのことです。自分の経験や得た情報をもとに瞬時に最適な手段(答え)を導き出すことが特徴です。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (59)

 たとえば、トマトを摂りたいと思ってスーパーに買いに行きます。おいしい生トマトは高値なので、瞬間的に検討へと脳が働きます。安価で栄養価の低そうなトマトにするべきか…。そんな時、近くのドリンクコーナーで500mlの高リコピン・トマトジュースを見つけます。

 「そういえば、情報番組でリコピンには善玉コレステロールを増やす機能があるって言ってたな…」、「(パッケージを見て)生トマトと比べてジュースのリコピン吸収率は3.8倍なのか!」、「トマト切るのもメンドーだし、ジュースのほうがラクだな」と、自分の引き出し情報(経験)とその場の情報を交錯させ、努力を要さず、瞬時に生野菜をやめてジュースに意思決定してしまうことがあります。

 つまり、皆さんは無意識に高速回転でヒューリスティックを使って「答え」を導き出しているのです。

■(62)都合のいい情報での決断は、合理的に見えて、じつは経験的でブレている

 直感思考のヒューリスティックは一見合理的ですが、「経験的に都合よく判断」しているだけなので、安価品の購入にのみ適しています。これを合理的と勘違いして重要案件を決定し続けると、大きな損失につながる誤った答えを出してしまう場合があります。

 高価格帯やこだわり商品を購入する場合には、性能、価格、用途、スペックなどさまざまな情報を収集し、要件を熟慮し、検討・決定するべき。この合理的思考を「システマティック」と言います。人間は「ヒューリスティック」とこの「システマティック」という2つの思考を使い分けて、生活しているのです。

 ※参考文献:「サクッとわかるビジネス教養 行動経済学」

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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