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小惑星ベスタに存在する巨大な谷の形成メカニズム 米ジョージア大学の研究
小惑星ベスタにある巨大な谷 この星にはレアシルビアとベネネイアと呼ばれる2つの巨大な谷が存在している。 (c) NASA,JPL[写真拡大]
小惑星の大きさでケレス、パラスに次いで3位にランキングされるのがベスタであるが、この星にはレアシルビアとベネネイアと呼ばれる2つの巨大な谷が存在している。これらの谷はベスタのサイズと比較すると破格に大きな地形であり、地球のような地殻変動や降水による浸食が起こらない小惑星でなぜ、このような地形が形成されたのかという謎が存在している。アメリカのジョージア大学は8月31日、この謎に関する研究についての情報を公開した。
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そもそも小惑星のサイズ感をイメージするのは難しい。なぜならば地球のような球形に近い形状をしていないからだ。いびつな形状の小惑星のサイズを定量的に表現するのは難しい。そこで登場してくるのが幾何平均と呼ばれる指標である。
これは相乗平均とも呼ばれるが、小惑星のあらゆる方向(ここではn個の方向で測るものとする)で測った大きさを全てかけ合わせた値のn乗根が、相当する。ベスタの幾何平均直径は529kmのため、かなりいびつな形だが球形に直すと529kmくらいになるとイメージすればよいだろう。
冒頭で示した2つの巨大な谷の中で大きいほうのレアシルビアは大きさが505kmもあり、小さいほうのベネネイアでも大きさが395kmもある。つまりこれらの谷のサイズはベスタの幾何平均直径529kmに比しても、異常に大きいことがお分かりいただけることだろう。
これまでこの2つの巨大な谷は1度の衝突イベントで生じたものだという説と、地球における断層と同じメカニズムで形成されたという説が考えられてきた。だが、これら2つの谷の形成年代を厳密に調査した研究事例はこれまでになく、ジョージア大学の研究者はクレータカウント法によってこれらの年代比較を試みたのだ。
これは単位面積あたりのクレータ個数(クレータ数密度)から、その地域の年代を見積もる方法だ。結果的には2つの谷の形成年代に明確な差を見いだせず、地球における断層のようなメカニズムでこれらの地形が形成されたのではないかという従来一部の学者が唱えていた仮説に対しては、否定的な結果となった。だが、ジョージア大学の研究者たちは厳密に確証を得たわけではなく、真実の究明にはまだ時間がかかりそうである。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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