NYの視点:コスト大幅上昇、消費者への波及は時間の問題

2021年8月13日 07:39

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記事提供元:フィスコ


*07:39JST NYの視点:コスト大幅上昇、消費者への波及は時間の問題
7月消費者物価指数(CPI)は前月から減速した一方で、同月生産者物価指数(PPI)は過去最大の伸びを記録している。エネルギー、運輸コストの大幅上昇が全体指数を押し上げた。食品価格の伸びは減速。

コストの上昇にかかわらず、企業は消費価格に反映できない状況となっており、利ザヤが縮小している。コストの上昇が続き、企業が最終的に消費価格に反映せざるを得なくなった場合、今後、CPIも再度上昇する可能性は懸念となる。

米労働省が発表した7月生産者物価指数(PPI)は前月比+1.0%と、伸びが6月から鈍化予想に反し同水準を維持した。前年比では+7.8%と、6月から減速予想に反し、伸びが拡大し、統計方法が修正された2010年来で最大を記録。変動の激しい燃料や食品を除いたコア指数は前月比+1.0%と、6月から伸びの減速予想に反し、同水準。前年比では+6.2%と、6月から予想外に伸びが拡大し、2010年来で最大となった。商品価格が高止まり、供給のボトルネックが依然、企業のインフレ圧力となっていることが明らかになった。

一方、7月消費者物価指数(CPI)は前月から減速。特にパンデミックによる需要急増で価格が2桁台の上昇ペースを示していた中古の自動車・トラック化価格が+0.2%と、前月の+10.5%から大幅に鈍化。輸送や衣料品の価格も前月から鈍化したため、インフレがピークをつけたとの見方も浮上。しかし、債券王として知られるダブルラインキャピタルのCEO、ガンドラック氏はツィッターで、インフレが低く評価されていると指摘。インフレが4%を持続的に維持した場合、「上昇」とみなすべきと主張している。7月消費者物価指数(CPI)は2カ月連続で前年比で+5.4%。

強い7月雇用統計を受けて、FRB高官の早期の債券購入縮小を支持する意見が増えている。超タカ派で知られるカンザスシティー地区連銀のジョージ総裁は「異例なFRBの金融緩和を巻き戻す時がきた」としたほか、ダラス連銀のカプラン総裁は、もし、経済が予想通りに展開したら9月FOMCでテーパー計画を発表し、10月にテーパ開始をすべきだと主張している。一方、パウエル議長やクラリダ副議長は、政策の変更には実際の経済の展開を確認していく必要があると、見通しに基づいて、行動しない方針を度々確認している。

今月末のジャクソンホールでのFRB年次会合での演説で、強い7月雇用統計を受けたパウエル議長の労働市場の判断や、インフレの判断に基づく、資産購入策の行方に注目が集まる。果たして強い雇用統計を受けて議長の姿勢が変わったかどうかを見極める。《FA》

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