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パパ育休に立ちはだかる理想と現実のギャップ。「何で育休を取ったの?」と言われないためにやるべきこと(連載第4回)
(連載第4回)日本ではまだ数パーセントしかいない、男性の育休取得者。でも、いま確実に育休をとる男性が増えています。なぜでしょうか? 本連載は、書籍『なぜパパは10日間の育休が取れないのか?』から、パパたちが育休と向き合うことでどんなことを考え、感じ、乗り越えてきたのか、実際のSTORYとあわせてお伝えします。本連載は7回を予定しています。ご興味いただけた方は記事最後に紹介している書籍『なぜパパは10日間の育休が取れないのか?』もぜひご覧ください。
本連載は、書籍『なぜパパは10日間の育休が取れないのか?−家族も、自分も、会社も、みんなが幸せになる育休の取り方・過ごし方・戻り方−』(2021年4月発行/著者:成川 献太、パパ育休2.0プロジェクトメンバー)の一部を、許可を得て抜粋・再編集し収録しています。
育休中に悩む「パパ育休の目的とは?」
「男性の3割が取るだけ育休」というデータもあるように、パパが育休を取っても実際には育児や家事の役割分担がうまくできず、逆にパートナーの不満や負担が大きくなることもあります。
また、パパとママとの間で育休に関する捉え方がずれていたことで、関係が崩れてしまったという声も聞きました。この傾向は特にダブル育休(2人そろっての育休)を取得した家庭に比較的多くみられました。
さらには、育休を取ったことで「パパ自身が悩む」という声も聞きました。会社に送り出してもらった育休を有意義なものにしたい、そしてレベルアップして会社に還元したい、という思いがある一方で、毎日の家事育児に追われる現実。育休に入る前に思い描いていた理想と現実との間に大きな隔たりがあり、そのギャップに悩んでいたというパパもいました。
そんな「パートナー・自分との関係」に向き合ったパパのSTORYです。
【STORY】「何で育休を取ったの?」育休の目的を自己研鑽としていた私
このSTORYを話してくれた方
・育休パパ 齋藤梓伸さん
・職業 教員(公立小学校)
・家族構成(育休取得時) 妻(教員)・長男(2カ月)
・育休歴 1人目が生まれた2カ月後から7カ月間の育休を取得。妻も合わせて育休を取得。「何で育休を取ったの?」
妻のこの言葉がきっかけで、私は本当の意味で家族と向き合うようになりました。
お互いの勤務地が離れている私たちは、結婚した当初から週末婚、いわゆる週末だけ会い、平日はそれぞれの家で暮らしていました。そして妻が産休に入ったことをきっかけに、初めて一緒に暮らすことになりました。
お互いに離れて住んでいたため、私は、結婚してからも独身時代とあまり変わらない生活をしていました。お互いに自由な時間を確保し、やりたいことをする。こんな気持ちのまま初めての妻との同居が始まりました。
個人から夫婦、そして家族へ、家庭のスタイルが変化したにもかかわらず、私の気持ちはまだ独身時代の時間の使い方から切り替えることができていませんでした。
育児休業の目的をはき違えていた
妻が里帰り出産をしてから、育休を取得するまでの間は妻の実家に週末160㎞を通う生活をしていました。その間は緊張感があり、私も積極的に育児に参加したり、妻をサポートしたりしていました。
しかし、同居が始まり要領を覚えてくると、多くの時間を自分の学びに当てていました。
妻に相談をすることなく自分の予定を入れ、毎日、気が狂ったように自己研鑽を重ねていました(中にはほぼ1日中、パソコンの前に座っていたこともありました)。育児はその隙間時間に手伝うという感覚で、育児休業の目的をはき違えていたような気がします。
そんな私に耐えかねて妻が一言「何で育休を取ったの?」
普段から自分の思いをため込む妻。そんな妻から言われた言葉に私はハッとしました。
最終的にはその言葉を3回も言われることになるのですが、正直なところ、1回目と2回目に言われたときは「どうしたら私の思いを理解してくれるだろう?」「何で、自分の成長したいという思いを受け取ってくれないのだろう?」「問題なのは、Zoomで行う打ち合わせの回数? 時間? どれを調整したらいいの?」と思っていました。
しかし3回目「何で育休を取ったの?」と妻から言われたことをきっかけとして、「なぜ自分が学びに時間を使いたいか」を伝えることができました。
今思えば、パソコンの前に座ってZoomで話している姿を見た妻は、私がなぜそんなことをしているのか理解していなかったのだと思います(私が伝えていなかったので当然のことですが)。
妻からこの言葉を受け取るたび、話し合ってきました。ただ、3回目の妻の言葉をきっかけとして、やっと少しお互いの心が通い合った感覚が少しありました。
育休を、自分自身を高め見つめ直す機会にもしたい、ということを正直に伝えました。
そして予定を入れるときはあらかじめ相談すること、そもそも自分の予定を減らし、育児を優先した生活をすることを妻と膝をつき合わせて話し合って決めていきました。
そうしていくうちに私からの一方的な要求や願望を伝えるばかりでなく、妻からポロっと「1人の時間もつくりたい」と話してくれたことがありました。それを受けて私は、子どもと2人で外に出かけたり、妻の1人の時間を確保したりすることもできるようになりました。
妻の考え方に歩み寄り、妻も私に歩み寄ってくれたことでお互いの正直な気持ちを伝え合う機会が増えました。結果として、普段は自分の思いをため込む妻が、ささやかな希望を伝えてくれるようになったのだと思います。
「私の気持ちを受け止めてくれてありがとう」という妻の言葉
育児休業に入ったころの私を振り返ってみると、妻のサポートをする気満々でした。
夜泣きに対応して妻を寝させてあげたいとか、夜中でもミルクを作ってあげたいとか、そんな感じです。
しかし、夜泣きに関しては妻の方が早く気づいて起きますし、ミルクに関しても完全母乳に近い形になったため、私にできることはなくなったように思いました。
「私があやしても泣き止むことはない」「妻にしかできないことばかりだ」
実際、私があやしても泣き続ける息子を妻が抱っこした瞬間、息子がスヤスヤと眠る瞬間を何度も体験しました。
そんなことが続くうちにいつしか「自分にできることはほとんどない」と思うようになっていきました。今考えるともっとできることがあったように思いますが、そのときは「自分にできることはない」と思ってしまいました。
結婚して3年後に一緒に住み始めても、子どもができても、自分の時間の使い方を見直すことがなかった私。そんな私が、育休を取ることによって、妻との心の通った会話が増え、その中で、自分の生活を見直すことが少しずつできるようになりました。
妻と話した中で一番心に残った言葉は「私の気持ちを受け止めてくれてありがとう」という言葉でした。
たしかに、今までの私はまずは自分の思いを伝え、どうにか妻に受け入れてもらいたい、という感じでした。
しかし、育休中に会話を重ねることで「まずは相手の言うことを聞いてみよう」と思えるようになりました(発展途上で「まずは自分の思いを受け入れて欲しい」と思うこともまだまだありますが)。
7カ月の育休期間で「父親脳」に
今振り返ってみると、結婚しても、子どもができても、私は父親としての考え方(=父親脳)になっていなかったのだと思います。
一方、妻は妊娠や出産によって仕事を離れたり、体が変化したりすることによって、少しずつ母親としての考え方(=母親脳)になっていったのだと思います。
そんな考え方が大きく異なる2人が初めて一緒に住み、初めて一緒に子育てをする。今、自分がしてきたことを振り返ってみるとゾッとしますが、当時の私は、自分の行動に疑問を持つことはありませんでした。
私の場合、結婚しても3年間は離れて住んでいたこと、そして出産を機に同居が始まったことで、個人から夫婦を通り過ぎて一気に、家族へと家庭が変化しました。
言い換えると、2段階の切り替えを一気に行った感じです。結婚しても独身時代のように自分の時間を自由に使えていた状態から、子どもができて家族がいる状態へ。
今思うと、私は父親脳への切り替えができていませんでしたし、切り替えることが本当に難しいことだと実感するようになりました。
幸い、私は7カ月間の育休を取ったことで、妻との会話が圧倒的に増え、その結果、父親脳になるための期間を得ました。もしかすると、この期間がなければ自分の時間の使い方を見直すこともなかったかもしれません。
もちろん育休を取らなくても父親脳への切り替えをできるパパもいると思いますが、少なくとも私には難しいことでした。そのきっかけを得た育休に今でも本当に感謝しています。
この頭の切り替えができたとき、私は初めて父親になれた気がしました。
夫婦で価値観を共有し、育休に対する思いをすり合わせる
齋藤さんのお話からは、育休を「自分の成長の機会にしたいパパ」と、そんな自分の時間を何よりも優先するパパに不満をもつママとの間でズレが起きていることが読み取れます。
またパートナーから「何で育休を取ったの?」という本質的な問いをされたことで、自分の時間の使い方を見直し、個人から夫婦、そして家族(父親)へと考え方を変化させていく過程を知ることができました。
「夫婦の会話は大切」ということはよく言われますが、会話の目的はお互いの価値観を共有し、お互いの思いのズレをすり合わせていくために行う「その期間としての育休」と捉えることもできると感じました。
著者:成川 献太
広島県で小学校教員を務める3児の父。第3子誕生により、2020年8月より1年間の育休を取得。その際「家族との向き合い方」で悩んでいたところ、他のパパたちも同じように悩んでいることを知る。家族と向き合うパパママを増やしたいと、出版プロジェクトに向けて行動を開始。育休&共働きコミュニティ「ikumado」メンバー。
ikumado – 育休&共働きコミュニティ
子供が産まれても、社外のいろんなひとと自分軸の話をしたい男女が集まる参加無料のコミュニティです。イベントは主に「ZOOM」を使っていますので、自宅にいながら気軽に参加できます。内容は、キャリア、ビジネス、ワークライフバランスなど。共感いただける方、ぜひFacebookでつながりましょう!
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■人生が変わる、幸せな育休とは■
・パパ育休って、ぶっちゃけどうなの?
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15人のパパ・ママが、育休の取得前から育休中・復帰後に感じたこと、何に悩みどのように解決していったのか。家族構成も職業や立場もさまざまなパパ・ママのストーリーが、この1冊に詰まっています。
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