バフェット氏に引導? バリュー投資の終焉と緩和バブルの副作用 (3)

2021年5月11日 07:28

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 バークシャー社のポートフォリオにおいて、アップル社の占有率が急激に増加したのは2017年以降である。それまでの占有率は5%程度でしかなかったが、2017年末には17%程度に引き上げられ、占有率は大手銀行であるウェルズ・ファーゴに次ぐ第2位になった。そして、2020年末のポートフォリオでは、なんと50%程度にまで引き上げられたのである。

【前回は】バフェット氏に引導? バリュー投資の終焉と緩和バブルの副作用 (2)

 バフェット氏は、今回の年次株主総会でも、アップル社、特に現会長であるティム・クック氏への賛辞は惜しみなく、「ティムはこれまで過小評価されてきた。彼は世界でも最も優れた経営者の1人だ」「スティーブができなかった多くのことを成し遂げた」と手放しだった。

 しかしながら、バリュー投資を長らく続けてきたバフェット氏が、グロース投資の対象であるアップル社への投資をしたことで、その信念が変えられたと思うのはミスリードだ。2018年の年次総会においても「ハイテク株だからアップルに投資したのではない」と明言しているのである。

 それでは、なぜアップル社の株式を大量保有するに至ったのだろうか。そこには、バフェット氏の信念に通ずる「配当金」の存在があることを忘れてはならない。バフェット氏がゴールドへの投資を好まないのは、配当金が無いという理由であることは有名だ。投資を原資に得た利益の対価として、株主への還元があってしかるべきという信念がそこにある。

 そして、この配当金の存在に気付いた時、バークシャー社のポートフォリオの運用実績が、S&P500種株価指数の運用パフォーマンスと同等であっても、ナスダック100の運用パフォーマンスに劣ろうとも、意に介していないことを理解しなければならない。

 つまり、バフェット氏はそもそも、市場における変動幅で利益を得るキャピタルゲインを狙っているわけではなく、「配当金」であるインカムゲインや、キャピタルゲインのなかでも株主への還元にあたる「自社株買い」に重きをおいているのである。これが、バフェット氏の思考の全てであり、ポートフォリオを占有する銘柄の最低条件だ。

 アップル社と同列とされるグロース投資の対象銘柄としては、ナスダックの大半を占めているGAFAM(Google、Apple、facebook、Amazon、Microsoft)が挙げられるが、2017年の株主総会で述べていた、アマゾン社やグーグル社への投資機会を逃したことに対する後悔は、案外リップサービスだったのかもしれない。アマゾン社、グーグル社、フェイスブック社は、全て無配当である。

 GAFAMを代表とするナスダック市場のハイテク株は、バフェット氏が重視する株主への還元よりも、自社の成長を優先してきたことで有名だ。たとえば、アマゾン社の成長戦略は「利益度外視」「薄利多売」であり、創業以来赤字を計上しながらも、その利益のほとんどを設備投資や事業展開に費やし、ビジネスをスケールしていくというものであった。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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