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バフェット氏に引導? バリュー投資の終焉と緩和バブルの副作用 (1)
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5月1日、投資の神様ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ社が、年次株主総会を開いた。バークシャー社の株主総会は、バフェット氏の口から運用実績や株式相場全体のレビューを聴講できるチャンスでもあり、例年、会場の収容人数を大幅に上回る観客が集まる、投資家にとっての一大イベントでもある。
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昨年はコロナ禍によってオンライン開催となり、バフェット氏の盟友である同社副会長のチャーリー・マンガー氏は不参加であったが、今年はオンライン開催ながらも、マンガー氏との同席が叶った。バフェット氏90歳、マンガー氏はなんと、御年97歳だ。
今年の株主総会も、今後の株式相場を予測するためのヒントが多く示されただけではなく、投資の基本を振り返る良い機会でもあった。主要な発言を確認していこう。
「オッズは、(S&P500などのインデックス投資に比べて)バークシャー社への投資(が有利)だと思うし、私はバークシャー社が好きだ。しかし、平均的な人が銘柄選別をやれるとは思わない」というのは、バフェット氏従来の姿勢でもあり、マンガー氏と意見が割れた内容である。ここには、従来のバリュー投資に対する葛藤が見られた。
バフェット氏は元々、株価全体の動きを示すインデックスへの投資に肯定的だ。もちろん、個別銘柄を組わせてポートフォリオを作り、投資運用を代行している会社の経営者として、その発言には大きな矛盾がある。しかし、肯定的なのは「素人が投資を行う場合に限って」という条件付きだ。
過去にバフェット氏は、投資信託すらバッシングしてきた。投資信託は、ファンドや金融機関によって組み合わされた銘柄のポートフォリオを買うに等しく、投資初心者には魅力的だ。そもそも、財務諸表も読み解けないレベルの初心者が、個別の銘柄を選択するにはリスクが大きい。それであれば、専門家によってバランス良く組み込まれたであろう投資信託を購入するほうが安心に思える。
しかしバフェット氏は、投資信託を購入するならば、インデックス投資をしたほうがパフォーマンスは良いと主張したのである。さらに、そこに手数料が発生するなんて馬鹿げていて、むしろ、恣意的な銘柄選択があるのではないかという立場でもあった。バフェット氏は、それだけ自身の銘柄選択、つまりはポートフォリオに自信をもっていたのである。
過去、この発言に対して、ファンドの経営者がバフェット氏と運用のパフォーマンスで勝負をしたことがあった。ファンド側は優秀だと思えるファンドを5種類提示し、バフェット氏はS&P500のインデックス投資のみでの勝負だった。数年間の運用の結果は、バフェット氏の勝利であった。
バフェット氏の銘柄選定のモットーは、自らがその企業に惚れ込み、永久保有できるかどうかであった。永久保有できるという理想が、「堅実に利益を出していること」「シンプルで理解できる事業であること」という条件につながるのである。そんな企業が「割安である」タイミングで株式を購入する。これがバリュー投資の基本だ。
そして、投資を受けた企業は、その資金を下支えとして、これまでどおり継続して利益を出し、余剰利益の一部は配当で還元する。バフェット氏が行っているのは、まさに株式投資のあるべき姿であり、それを代行しているのがバークシャー社というわけだ。しかしながら、バークシャー社の運用成績が、ここ数年芳しくない。(続く)(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
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