5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (52)

2021年5月2日 07:23

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 アンガーマネージメント編の最終回となります。今回も某精神科医の著書を参考に話していきます。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (51)

 その著書では、「~すべきだ」「~でなければならない」と物事を決めつけて完璧を目指す考え方を「should思考」と定義し、この思考法の人は「感情的になる人が多い」と分析しています。

 should思考に対して、強い願望を持たずに「~だといいな」「ベストを尽くせればいいな」と一歩後退した曖昧さで臨んだり、相手や周囲を緩く受け入れるグレーな態度を「wish思考」と定義しています。この意志薄弱こそ、「感情的にならない思考法」であると説いています。

 たとえば、60点を目指していい加減に仕事をこなす。相性が悪い相手には無理に合わせず、仕事を打ち切る。自分の意見に固執せず、自分が正しいという思い込みを捨てる。こういった姿勢が自身をリラックスさせると唱えているのです。「完璧を目指す精神を捨て、自らの気持ちを後退させ、気楽に曖昧に緩やかに臨むwish思考なら、怒る感情も湧かない」と指南しています。

 でも、皆さん。考えてみてください。

 自責思考と主体性に欠けた、自身の都合だけを考える自己チュー人間に仕事を依頼しますか? こんな低コスパな人間と協働してみたいですか?

 私はノーです。完璧を求めるshould思考者のエグゼキューションの成果が仮に80%とすれば、目的・ゴールが不明確で無責任且つ短慮なwish思考者の仕事など20~30%程度の出力が限度でしょう。これでは一生、プレゼンできるクオリティーに到達しません。

■(54)アンガーマネージメントの目的は、協働生産性を上げること

 この著書に記されたアンガーマネージメントは、「相手の怒りの発露を無視して逃亡する方法」や「自分が不機嫌にならないためのコツ」を懸命に伝えています。これらは、「受け流し対応」と「現実逃避」のメソッドでしかなく、感情操作ではありません。

 人生の過程で生成される個々人の性格は複雑で未知です。個々の成熟度も計り知れるものではありません。にもかかわらず、一方的で画一的なマニュアル研修を受けたところで、自分と相手の感情をコントロールするメソッドなど習得できるはずがありません。では、どうするべきか。

 仮に私が人事局長ならば、秘密裡に問題社員たちを収集し、大量のケーススタディと演習のカリキュラムを組んだ研修合宿を敢行します。「改善」という名の「性格改造・矯正・整形」を目的としたハードな研修です。

 この合宿では、怒らない、怒らせないといった怒りの感情の発露を予防する心理教育に留まらず、「相対する両者が共通の目的に向かって協働できる状態まで立て直し、生産性をMAX上げる」精神性の獲得を眼目に、一人ひとりに合った感情操作法を習得してもらいます。合宿修了後も現場での実地訓練を継続し、確実に定着させていきます。

 著書が唱える「相手をスルーする自己防衛マネージメント」では、一時的に怒りを遠ざけても、すぐに強襲され、延焼していく様が想像できます。相手の本質を見ようとしない自己愛からなるアンガーマネージメントでは、相手と信頼関係は築けず、協働での生産性を上げることはできません。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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