常温下で安全・低コストに還元麦芽糖を合成 新たな触媒を開発 阪大

2021年4月23日 16:41

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開発したハイドロタルサイト固定化合金ナノ粒子触媒。(a)は電子顕微鏡画像、(b)~(e)は元素マッピング像。(画像: 大阪大学の発表資料より)

開発したハイドロタルサイト固定化合金ナノ粒子触媒。(a)は電子顕微鏡画像、(b)~(e)は元素マッピング像。(画像: 大阪大学の発表資料より)[写真拡大]

 還元麦芽糖(マルチトール)は、食品添加物や甘味料などに利用されている高付加価値の物質であり、より安全かつ低コストでの合成が求められている。マルチトールの合成には、スポンジ状のニッケル触媒が用いられているが、活性が低い上に自然発火性があり危険であるという問題があった。大阪大学は22日、常温下でもマルチトールの合成が可能な触媒を開発することに、世界で初めて成功したと発表した。

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 マルチトールは、麦芽糖(マルトース)を水素化することで合成される。これまでの活性の低いスポンジニッケル触媒を用いた合成では、数十気圧以上の高圧水素内で高温下という条件が必須であったが、スポンジニッケル触媒はさらに自然発火性があり取り扱いが難しく、容易に失活するという問題も抱えていた。

 これらの背景から、発火性がなくさらに高活性な触媒の開発が必要とされてきた。近年はレアメタルの一種であるルテニウム触媒を用いた合成も行われてきたが、低コストな合成には向いていなかったため、貴金属を用いずに高活性な触媒を開発することが課題とされてきた。

 今回研究グループは、ニッケルとリンを合金化し、ナノ粒子を担持した触媒を開発。合金化することで大気中でも安定になるとともに触媒活性が極めて高く、常温下でもマルトースの水素化反応を促進することができる。またこの触媒は、高濃度のマルトース溶液にも適用可能なため、工業的な合成プロセスへの応用もしやすく、固体触媒であるため触媒の回収や再利用も容易であるなど、実用性も兼ね備えている。

 今回の研究成果によって、より安全で低コストかつ省エネルギーなマルチトールの生産が可能となる合成プロセスの構築が、期待される。また合金ナノ粒子の開発で得られた知見は、マルチトール以外の触媒プロセスへの応用にもつながる。

 今回の研究成果は「ACS Sustainable Chemistry &Engineering」誌のオンライン版に21日付で掲載されている。

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