関連記事
FRBと日銀の一蓮托生 まさかのSLRの緩和措置終了と日銀黒田総裁発言 後編
(c) 123rf[写真拡大]
FRBがSLRの緩和措置を予定どおりに終了したのは、米国債市場が「当時に比べて安定した」という根拠を持ってではあるが、米長期金利の上昇懸念が高まっていた中での緩和措置終了は、奥歯に物が挟まったような違和感を覚える内容である。
【前回は】FRBと日銀の一蓮托生 まさかのSLRの緩和措置終了と日銀黒田総裁発言 前編
結果、そこには一定の失望感が産まれ、銀行株が売られるなどのパニックも起こった。しかし、「予定どおりの1年間」でもあり、市場は当然といえば当然という納得感で、一旦は落ち着きを取り戻してはいた。
しかしながら、その状況に水を差すことになったのが、日銀の黒田総裁だ。FOMCに続いて行われた日銀金融政策決定会合で金融緩和の副作用を抑える方向に舵を切ったのだ。「10年物国債金利の変動許容幅の拡大」と「ETF(上場投資信託)購入方針の変更」を発表したのである。
もちろん、この内容はあくまでも現行の政策の微調整であるといえる内容だ。問題は、FRBと深い関係を持つ日銀が、FRBと時を同じくして金融緩和の一部を修正しようと動いたことである。この意味は大きい。
日銀は、2013年4月よりアベノミクスと連動して大規模金融緩和を行ったが、消費税引き上げ後の2014年10月に行われたのが、第2弾の金融緩和だ。この追加緩和は、FRBの量的緩和政策第3弾(QE3)終了のネガティブインパクトをカバーしたという意味では、実に見事であった。まさに一蓮托生だ。
その後、着実に出口戦略を進めるアメリカを後目に、日本は物価目標が上がらず万策尽きた状態に見えていた。そんな中で巻き起こったのがコロナショックである。幸い株価は回復したものの、日銀はETFを購入し続けた結果、日本最大の「物言わぬ」株主となってしまった。
この状態のままを維持することは明らかに不健全であり、含み益が12兆円前後にも膨らむ中、FRBと足並みをそろえて、ソフトランディングを始めたといえるのではなかろうか。つまりこれは「終わりの始まり」である。今後の日米の株価推移、そして米長期金利の動向は見逃せない。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
スポンサードリンク