5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (48)

2021年3月16日 07:28

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 「優位願望」が強すぎると相手に伝えるべき真意が歪んでしまう。しかし、競争社会においてはその願望そのものが自身を鼓舞する心の武器でもある。そんな話を前回しました。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (47)

 皆さんは、「あの企業なら私の提案に賛同してくれるはずだ」「あの相手ならコントロールできるはずだ」と臨んだプレゼンの場で、相手側のキーマンにバッサリと提案を拒否られた経験はありませんか? ブランドを毀損せずにハネる確信があれば、どんな企画を提案してもよいのですが、1つ留意点があります。

 「この提案しかありえない!」「ぜったい懐柔できる!」といった、優位願望の底流にある都合のいい「負の思い込み」だけは捨ててください。思い込みが強すぎると、拒絶された時にロジックよりも感情が上回り、そこで思考停止、ハイ、試合終了となってしまうからです。

 このちょっとした怒りの感情は、異論に即応した言語化が苦手という対応力の低さだけでなく、その手前にある基本的な準備不足によって引き起こされるものではないか、と私は推測しています。

■(50)「反論」ではなく、「相談」という形でリザルトを変えない


 では仮に、異論に「反論」するとしましょう。相手が成功体験を共有した担当者ならば、その反論を傾聴してくれる可能性があります。しかし、その関係性だけで押し込んだ企画がバリューを出せなかった場合、一転して、2者間を歪な関係に変えてしまうでしょう。

 私なら、「目指すリザルトが変容しない」程度のA案の変型版、B案の変型版といったオルタナティブを頭中に用意しておきます。そして、「相談」というスタンスでA4コピー用紙にオルタナティブをその場書きし、相手から承諾を得ます。

 異論を唱えられても建設的に即応できる「緻密な準備」をしておくこと。決してサブや代案という意識ではいけません。成果目標を変えずに、その場を収め、次に進められる隙のないプレゼンを準備する。これは、スキルの体得・向上が怒りを封じ込めるという考えです。

 では、そのオルタナティブさえも通らない時は? その企画を潔くあきらめる。そして、他のクライアント用にチューニングし直し、後日、他社にプレゼンすればよいのです。「A社がNGなら、B社がある!」とクールに構えておけば、怒りの感情など起こりません。そういう勝手さを習慣化し、自分をコントロールすることこそ、「クリエイターのアンガーマネージメント」だと私は思っています。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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