ロビンフッドは民衆の敵か味方か ゲームストップ株価乱高下から学ぶこと 後編

2021年2月8日 17:32

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 そもそも、ロビンフッド・ファイナンシャルを立ち上げたメンバーの思いは、その社名にあった。日本では投資文化が根付いていないが、アメリカでは資産の5割程度を投資運用している現実がある。つまり、少額でも利用はしたいのだが、「売買手数料」「最低預入残高」「最低取引単位」などがボトルネックになり、参加できない低所得者の人々も多く存在した。

【前回は】ロビンフッドは民衆の敵か味方か ゲームストップ株価乱高下から学ぶこと 前編

 これらを解消するために、閉じられた空間であるウォール街に挑戦し、慣行を破ったサービスや初心者でも戸惑わないUIを提供することで、ロビンフットは投資運用のハードルをさらに下げたのだ。まさに、金融の民主化であり、ウォール街に根付く富裕層への挑戦という意味では、ロビンフッドそのものだ。

 だがその一方で、投資に対する敷居を各段に下げたことは、ロビンフッドの大きな罪となるだろう。アプリの表示から多額の借金を背負ったと思い、それを苦にして20歳の若者が自殺する事件が昨年夏ごろ起きている。これはまさしく投資への正しい理解が足りなかったという一因もあろう。投資をスマホゲームと同等に受け取らせるのはかなり危険だ。

 さらに、日本の金融業界との圧倒的な違いとして、レバレッジ規制の弱さがある。レバレッジとは、手持ちの金額の何倍まで取引を可能とするかであるが、例えば日本のFXにおけるレバレッジは25倍までに規制され、株式(信用取引)も3倍程度である。ビットコインは過去の急変動から4倍が上限であり、過去の経験則より厳しく規制されているのだ。

 FX(為替)のように、日々の動きが微々たるものであるため、レバレッジがあることでその微々たる動きを一定の収支につなげるという意味でのレバレッジではあるが、日本の25倍に対して海外では5,000倍などのレバレッジをかけることができる業者もいるため、ほぼ無法地帯といえよう。

 自殺した若者が取り違えたのは、73万ドル(約7800万円)という購入余力だったそうだが、口座には1万ドル(約100万円)程度の入金しかなかったのに、投資運用に対して経験の無い若者がそこまでレバレッジを効かせることが許されるのか、という議論にもなっている。また、クレジットカードから直接入金が可能であるなど、ロビンフッドは敷居が低いのである。

 フィンテックにより、結果として投資運用のハードルが下がり、金融の民主化が進んだことは、ゲームショップの仕手戦でSNSを利用した個人投資家連合が機関投資家に勝利するという、まさに改革が起こった瞬間ともいえる。

 一方で、金融に対するこれまでの経験則や方法論が通用しない時代になりつつあると考えれば、投資家にとって必ずしも歓迎される状況ではないだろう。なんといっても株主となる本来の目的が失われていることも気になる。会社の業績はどうでもいい投資家の存在を、社会はどこまで許容していくのだろうか。新しいマネーの動きには十分注意したい。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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