英語のセリフで振り返る ショーン・コネリーの007

2020年11月16日 11:21

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 10月31日(現地時間)にバハマの自宅で亡くなった名優・ショーン・コネリーは、映画「007」シリーズの初代ジェームズ・ボンド役で有名だった。だがスコットランド出身で、同地の訛の強い英語をしゃべるコネリーの起用に、原作者のイアン・フレミングは難色を示していたという。

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 しかし『007 ドクター・ノオ』のテレンス・ヤング監督がコネリーに中流階級の身のこなしなどを教え込み、映画は大ヒット。彼の演技に対する賞賛の念の表明か、フレミングは後に発表した小説のなかでボンドの父親をスコットランド人にしている。

 さてコネリーが主演を務めた映画「007」シリーズ初期の作品。いずれも国際色豊かなキャストで、いろいろな国の人が話す英語を聞くことができるのが英語学習者にとってありがたい。

 イングランドやスコットランドの英語に加え、ミス・マネーペニー役のロイス・マクスウェルはカナダ人の英語。ボンドガールや悪役には非英語圏の出演者も多く、英語の吹き替えも使われている。

 このため「007」シリーズは、特にヨーロッパで話される英語の音に耳を慣らすのに適した教材と言えよう。ここではコネリー演ずるジェームズ・ボンドのセリフから、日常会話に応用できそうな英語を取り上げてみたい。

■What kind of work do you do? - Oh, I travel… a sort of licensed troubleshooter.

【訳例】お仕事は何を? 旅行関連、公認紛争調停人みたいなものかな。(『007 サンダーボール作戦』)

 ジェームズ・ボンドが、スパイという職業をぼかして表現したセリフ。「What (kind of work) do you do?」は、相手の職業を尋ねるときの定番の表現である。

 一般的な返事としては「I’m a car mechanic(自動車整備士です)」のように職業名を答える。バリエーションで「I repair cars(車の修理をしています)」のように、仕事内容を動詞で表現することもできる。

 ちなみに上のセリフで、troubleshooterの語尾のrを発音するのは、スコットランド訛の特徴のひとつである。

■There’s a saying in England: Where there’s smoke, there’s fire.

【訳例】イングランドのことわざに、「火のないところに煙は立たぬ」とある。(『007 ロシアより愛をこめて』)

 ボンドの注意深い性格を表すセリフ。「There’s a saying in (場所): (ことわざなど)」は、特定の地域の決まり文句を紹介するのに便利な表現なので覚えておきたい。

 「一寸先は闇」という日本のことわざを教えたければ、「There’s a saying in Japan: It is dark one inch ahead of you」となる。

■I think he got the point.

【訳例】腑に落ちただろう(『007 サンダーボール作戦』)

 背後に忍び寄ってきた暗殺者を水中銃で殺したときに放ったセリフ。「Get the point」は「理解する」という意味のイディオムで、「Do you get the point now?(わかったかな?)」のように用いる。

 このセリフは、pointという語が先端の意味も持つため、槍先が胸に刺さったことにかけている。ボンドのドライなユーモアを端的に示す好例だ。

■That’s just as bad as listening to the Beatles without earmuffs!

【訳例】(53年物のドン・ペリニヨンを摂氏3度以上で飲むことは、)耳あてをしないでビートルズを聴くのと同じくらい悪いことだ。(『007 ゴールドフィンガー』)

 ボンドが酒や食べ物にうるさいことを表したセリフ。またビートルズの音楽は好きではなかったようだ。

 このセリフでは、同等比較のas as構文が使われている。「as bad as...」で「…と同じくらい悪い」という意味になる。

 最近ウェブで見られた用例は、「The polls were just as bad as 2016. Biden still won(世論調査は2016年と同じくらい精度が悪かったが、バイデンは当選した)」。サンフランシスコ・クロニクルのサイトに掲載された記事の見出しだ。

■I must be dreaming.

【訳例】これは夢にちがいない(『007 ゴールドフィンガー』)

 ゴールドフィンガーに拉致されたボンドがジェット機のなかで目を覚ましたとき、目の前に美人パイロットが現れる。彼女の名前が「プッシー・ガロア」であると知ったとき、にっこり笑ってボンドが言うセリフがこれだ。mustが断定的推量の意味で用いられている点に注意されたい。

 ところでプッシーは、猫や女性を示す言葉。ガロアgaloreは「たくさんの、豊富な」という意味で、「Bargains Galore(店の名前:バーゲン山盛り)」のように使われる。女性にモテるボンドの相手にピッタリの名前ではないだろうか。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る

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