宇宙開発技術がラファエロの絵画の真贋を明らかに ESA

2020年10月23日 16:31

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X線スキャナーで撮像したラファエロの聖母子像 (c) Jiri Lautenkratz, InsightART

X線スキャナーで撮像したラファエロの聖母子像 (c) Jiri Lautenkratz, InsightART[写真拡大]

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 レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロとともに、ルネサンスを代表する画家であるラファエロ。彼が描いたとされる絵画の中には、信憑性が疑わしい作品も存在する。そうした作品のひとつである聖母子像の真贋を検証したと、欧州宇宙機関(ESA)が20日発表した。なぜ宇宙開発技術が絵画の真贋に関連するのか。

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■X線撮像で絵画の詳細が判明

 ラファエロの作品の真贋を検証したのが、チェコのスタートアップ企業InsightARTだ。同社が開発したX線スキャナーには、欧州素粒子研究所(CERN)が開発した技術が応用されている。国際宇宙ステーション(ISS)の放射線を計測するために使用され、光子の検出や数え上げなどが可能だという。X線スキャナーを実際に製造したADVACAMは、米航空宇宙局(NASA)のサプライヤーであり、その子会社がInsightARTだ。

 従来のX線撮像は白黒でのみ表現可能だった。だがInsightARTのX線スキャナーは、物質の化学組成によって色づけ可能だ。これにより、下絵から釉(うわ)薬まで絵画の詳細が明らかになるという。

 これまでに、作者不明だった絵画が、ゴッホが描いた作品であることを明らかにしている。今回、ラファエロが描いたとされる絵画「聖母子像」をX線スキャナーで解析した結果、最初から最後の工程まですべて、助手の力を借りずにラファエロ自身が手掛けたことが判明した。

■数奇な運命を辿る絵画

 ラファエロの絵画「聖母子像」を、チェコのスタートアップ企業が解析したのには、その絵画の数奇な運命と関連する。1517年に描かれた聖母子像は、同時期のローマ教皇・レオ10世の手に渡った。1798年までバチカンに所蔵されていたが、仏皇帝ナポレオンがローマを征服したことで、ナポレオン自身のコレクションになった。

 その後もフランス王室が所有していたが、英ニューカッスル大学の副総長に売却された。仏美術商が再び取り戻したものの、チェコのプラハへと移管。チェコスロバキア(当時)の大統領官邸に飾られた後は売却されることはなかったという。1992年にスロバキアで発見され、チェコの起業家の手に渡り現在に至る。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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