地球温暖化につながる世界のN2O排出、約8割は農業生産が原因 GCPの研究

2020年10月9日 20:25

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 一酸化二窒素(N2O)は主要な温室効果ガスの1つであり、オゾン層を破壊する物質としても知られている。グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)は8日に、過去数十年の世界N2O収支を調査した結果を公表した。その結果によれば、世界の人為的なN2O排出の82%が農業生産起源であることが明らかにされた。つまり、食糧生産システムが環境に対して大きな影響を与えていることが示されているのだ。

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 N2Oは、二酸化炭素やメタンなどと比較して大気中の濃度は低いものの、濃度当たりの温暖化をもたらす影響が高い。2018年のN2O濃度は1750年のN2O濃度の約1.3倍まで増加しており、2050年には倍増する可能性もある。この場合、地球温暖化も急速に増進されて世界の平均気温は3度以上上昇することになる。

 だが世界のN2O排出の全体像はこれまで詳細に把握されておらず、世界のN2O収支を正確に把握して課題を抽出する必要があった。

 国際的な研究グループの取りまとめをGCPが行い、全ての排出起源や地域を網羅して世界のN2O収支の集計、分析、総括が行われた。N2O排出量推定には、ボトムアップとトップダウンの両方の最新アプローチが用いられた。ボトムアップのアプローチとしては排出統計や排出プロセスのモデリングなどが行われ、トップダウンのアプローチとしては、大気観測からの逆推定によるモデリングの手法が採用された。

 その結果、過去数十年にわたり全地球のN2O放出が増加し続けており、その主な原因が人間活動による放出の増加であることが判明。中でも農業生産起源が82%を占めており、特にブラジルや中国、インドでの増加が最も顕著であった。

 これらの知見は、N2O排出を削減するために人類の食糧生産システムを見直す必要があることを強く示すものである。特に農業における窒素肥料の使用や家畜からの堆肥製造などは、N2O排出増加の主要因であり改善が喫緊の課題である。

 本研究の成果をまとめた論文は8日付のNature誌オンライン版にて掲載されている。

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