大幅上昇だが オーバーシュートする米株相場にGAFAの暗雲立ち込める

2020年10月8日 16:37

印刷

 10月7日のNYダウは、前日比で+530.70(+1.91%)の大幅上昇を見せた。ナスダックも同様に+209.99(+1.88%)の好調ぶりだ。コロナ禍に入ってからの米株市場は、ときに無重力のようにふらふらと乱高下を繰り返し、気が付くとコロナ禍前のポジションまで戻してきている。とくにナスダックの勢いはすさまじく、6月初めにコロナ禍前の最高値を超え、そのまま1万ドルを突破して青天井を登っていく流れだ。

 この高騰相場に見せられ、国内の投資資金が大量に米国へと流れ込んでいる。やや遅れながらも、個人投資家の参入も数を伸ばしているという。だが、今後も資金注入を続けることに問題はないだろうか?結論を言えば、資金面で弱い個人投資家は、ピークアウト警戒で一旦『見』に入るべきかもしれない。

 その理由としては、米株相場のオーバーシュートがある。この10年間の相場推移を確認すると分かりやすいだろう。

米株の指数
〇NYダウ: 1万ドル台から28000ドル台へ2.7倍の上昇
〇S&P500: 1000ドル台から3400ドル台へ3.1倍
〇ナスダック: 2000ドル台から11000ドル台へ4.8倍

日本株の指数
〇TOPIX: 800台から1600台で1.7倍
〇日経225: 1万円台から23000円台で2.2倍

〇英国のFTSE 100: 5500ポンド台から6000ポンド台で1.1倍
〇独国のDAX: 6500マルク台から13000マルク台へ2.0倍

 とくにコロナ禍による大暴落からの回復で、圧倒的に米株が強い。IT銘柄で構成されたナスダックが、インターネットをベースとしたAI化・ロボット化の社会システム構築の促進による上昇相場を継続していることは、理解できる。しかし、明らかにコロナショックで業績をダウンさせている米国全体で、これほど高い評価を受けるのは不適切ではなかろうか。

 ここに興味深いデータ分析がある。米国株の相場指数が軒並み高いのは、GAFAMの株価上昇に大きく起因していると言うのだ。例えばS&P500の指数をみると、コロナショック後のリカバリーは6月であり、年初価格からのパフォーマンスは現時点でプラス11%に及ぶ。しかし、ここからGAFAMの5社を外して計算すると、リカバリーは9月に入ってからとなり、年初からは1%上がったに過ぎない。

 実は、S&P500のシェアの20%ほどをGAFAMが占めている。この巨大IT企業5社の株価上昇はS&Pを大きくけん引する。もちろん、ナスダックもNYダウも大きく影響を受けて現在の株高相場を展開しているのだ。(引用元:ITmedia ビジネスオンラインの『S&P495で分かる・ブーム化する「米国株投資」に隠れた”歪み”』より)

 さて、このGAFAMの快進撃は今後も継続するのだろうか?長期的に見ればYESだろう。世界全体がスマートシティ化・デジタル化を進めていく中で、これら5社のさらなる活躍はゆるぎないと見て間違いない。ただし、オーバーシュートの気配が濃厚な米国株相場を、さらに押し上げる推進力になるかどうかは疑問だ。このオーバーシュートは、近いうちに再び大きな調整局面に突入する公算が高いのだ。

 7日未明にブルームバーグが報じたニュースには、米下院において反トラスト(独占禁止)小委員会が、GAFAによる経済支配に抑制をかけるための反トラスト法改革案を提出したとある。1年半に及ぶ調査結果は449ページもの報告書にまとめられ、この4社による市場の独占を認定した。この案が議会を通れば、巨大IT4社は分割措置を受けることになるだろう。

 すると、これまで後方に甘んじてきた中国のライバル企業の台頭も予想に難くない。このように、テクニカルとファンダメンタルの両面で黄色信号が点滅している。勢いよく上昇する相場を横目に見ていれば、投資家心理としては手を出したくなるのが人情だ。ただし、株式相場には『一般大衆が手を出し始めたら相場は手じまい』の格言もある。このタイミングで飛び込むのは、よくよく考えて判断するようにしたいものだ。(記事:TO・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事