5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (41)

2020年10月7日 07:23

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 過日、某企業から相談がありました。「求人募集をかけても応募者が少ない。困っている。そこで、ミッションステートメントを書き直したい」と。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (40)

 ミッションステートメントとは、経営理念をより具体的な行動指針に落とし込んだ内容で、主にオウンドメディアに掲載されるコピーです。企業の存在意義や、事業が社会に対して提供できる社会的役割を突きつめて考え、コピーライターが的確にテキスト化します。それを役職員全員で共有し、顧客やステークホルダーにダイレクトに語ります。従業員にとってはモチベーションや当事者意識を高めるツールになり、大仰に言うならば、「企業の憲法」みたいなものです。

 先に答えを明らかにしておくと、このミッションステートメントの見直しだけで就職希望者が急増することは、まずありえません。

■(43)生活者は、不確実性であっても従来の秩序を揺るがす動きを企業に求めている

 就労先として興味を持ってもらうためには、企業の活動自体を可視化し、そのブランディング、その価値に共鳴・共感・信頼・信用してもらわなければなりません。

 今は、もっともらしいことや正しいことよりも、従来の秩序を揺るがし、何かしらの動きを創ることに価値が出る時代です。たとえ、それが不確実性を帯びていても、そこに挑戦できるか否か、トライ&エラーで突っ込んでいけるか否かで「企業の見え方」が変わってきます(人間は保守である反面、不確実性を喜ぶ性質を併せ持っているのです)。

 常に新しいアクションを起こし続けている企業か。常に更新し続けている企業か。この動きこそ、企業としての最低限のバリューでしょう。

 コピーライターは書く前に企業を徹底的に取材し、「過去と未来の企業活動」を全て把握します。そして、その実態をミッションステートメントに反映させます。「何を言うか」以上に、「何をするか」「どのような企業であり続けたいのか」がその企業の価値を左右します。この実体の追究こそ、コピーライティングの巧拙以上に大切なことです。

 中堅以上のコピーライターであれば、バリューゼロ、ファクトゼロの企業に対しても、テクニックでいかようにでも書き分けられます。実体のない似非ステートメントコピーで、価値を「上げて見せる」ことも可能なのです。

 しかし、そのような空虚なテキストを世の中に提示しても、何の作用も意味も生まれません。この手の企業に遭遇してしまったコピーライターは、書く前に必ず担当者にこのことを教示してほしい。それもコピーライターの責務。残念ながら、そういったテキストを求める企業が少なくないことも事実ですから。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。

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