ゴーン被告、レバノンに恩返し? 大学でビジネス経営コースを立ち上げ

2020年9月30日 17:53

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 日産自動車の役員報酬をめぐる事件で日本から中東のレバノンに逃亡した元会長のカルロス・ゴーン被告(66)が、同国の私立大学で2021年3月をメドにビジネス経営コースの立ち上げることが29日、明らかになった。首都ベイルートの港で起きた8月の大爆発を受け、政治的空白と経済危機に陥っている母国レバノンの復興に貢献したい考えだ。

 ゴーン被告は一貫して無罪を主張しており、同被告の経営手腕や理念に対するレバノンでの評価は依然高く、成功者に対する憧れもあると言われる。一方、日本では共犯に問われた元日産代表取締役グレッグ・ケリー被告(64)の公判が主役なきまま始まったところで、日本との温度差を浮き彫りにする皮肉な格好となった。

■ゴーン被告が「1対1」で指導も

 カスリク聖霊大学(USEK)で29日行われた記者会見に姿を表したゴーン被告は、「目的は国と社会に貢献すること。レバノンに必要なのは雇用の創出だ」と語った。経営戦略と結果管理の3カ月コースの対象はレバノンや近隣諸国の経営者層で、学費は2万ドル。ゴーン被告との「ワンツーワン」での指導が受けられる。

 会見では高額な授業料を支払う余力がある市民はいないとの指摘もあったが、起業家精神を市民の間に回復させることこそが、レバノンの復興につながるとの見方を同被告は示した。仏ルノーで同被告の側近だったティエリー・ボロレ元最高経営責任者(CEO)や元ゴールドマン・サックス副会長など著名人が講師として名を連ねている。

■日本との温度差は鮮明に

 29日は折しも、日産の株主総会が開かれた。ゴーン被告が就任当初にもたらしたV字型の業績回復の功績も、その後の拡大戦略の失敗などによるコスト増で、日産は追加のリストラ策を余儀なくされている。本人の出廷なしでも民事訴訟は可能との見方が示されるなど、同氏の経営手腕や倫理観をめぐっては、日本とレバノン2国間に大きな隔たりがあることを印象づける結果となった。

■ベイルート復興の「恩返し」なるか?

 かつては「中東のパリ」と呼ばれるほど美しい町並みを誇った首都ベイルートを、再び廃墟と化した8月の大爆発。爆発原因となった硝酸アンモニウムとイラクの触手と言われる武装組織ヒズボラとの関連説もある。政治的腐敗の現実は、フランスなど各国から復興支援の妨げとなっている。レバノンの「自国民不引き渡し」原則に守られるゴーン被告の「恩返し」は果たして、吉と出るのだろうか?

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