【小倉正男の経済コラム】新型コロナ禍:分科会の役割は曖昧な忖度ばかり?

2020年8月4日 18:24

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■自治体が独自に「緊急事態宣言」

 新型コロナ感染の爆発が止まらない。東京都に続く格好で、大阪府、愛知県、福岡県など大都市を抱える府県で感染が急増している。

 感染者は連日1000人超~1500人内外となっている。「GoToトラベル」キャンペーンによる人々の移動による感染の影響は、現れるのがまだ先なのだろうから、これは大変なことになりかねない。異常な事態である。

 政府は地方観光経済が疲弊しており、これを救済するキャンペーンとしている。だが、人々の移動で感染が地方に広がれば元も子もない。経済が再び止まるということになれば、地方経済はさらに疲弊することになる。

 地方自治体などから、感染、あるいは経済面でも、「人災」、「失政」といった声が出始めている。確かに、見通しが甘いというか、間が悪すぎるというか、目も当てられないことになっている。

 岐阜県、三重県などが独自に「第2波非常事態」「緊急警戒宣言」を発令している。モタモタしているばかりで、やる気も能力もあるのかないのかわからない政府に愛想を尽かした格好にもみえる。

■分科会の責任は政府と同等に重い

 つらつら眺めているのだが、基本が疎かにされている、あるいは基本ができていないなと思うことが少なくない。

 政府分科会、以前は政府専門家会議といっていたようだが、政府の判断・行動にお墨付きを与えるばかりの存在になっている。いわば、政府の免罪符に使われるばかりで、ほとんど役割が何なのかという曖昧な存在になっている。

 分科会は、政府が任命しているのだから、どうしても政府の意向を忖度するようなヒトが集められることになっている。場合によっては政府をリードする、あるいは政策をチェック&バランスする役割を持てといっても無理である。

 「GoTOトラベル」キャンペーンでも分科会は推進したのか、そうではなかったのか、曖昧であり、悪くいえば言い訳ばかりで二枚舌である。政府の責任も重いが、分科会の責任も同等に重いというしかない。

■基本の権力分立ができていない

 基本ができていないというのは、権力分立ができていないという点である。

 いまの分科会は、政府分科会である。本当は、政府と分離した分科会にしなければならない。政府と同じ意見の分科会を設置しても、それは設置していないと同じである。それでは「飾り」のような存在であり、しかも責任が分散されることになりかねない。

 本来、分科会は政府が任命するのではなく、独立性を持った機関(例えば国家危機管理委員会など)を設置しておいて、その機関が任命する格好にしておくべきである。

 そうした独立性のある分科会であれば、政府をチェック&バランスし、場合によっては政府をリードすることができる。

 三権分立、医薬分業などはそうした考え方からつくられてきている。医薬分業にしても、医者に薬の調合まで権限を渡すのではなく、薬剤師に権限を分立している。医薬分業がなければ、患者は医者ひとりに全面的に自らの生命を預けることになる。

 いまの分科会にチェック&バランスの役割を果たせといってもおそらく意味はない。基本ができていないというのは、酷い結果をもたらしかねないということにほかならない。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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