5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (37)

2020年8月4日 08:27

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 美大受験予備校で非常勤講師をしています。企業社会で得た知を若者に還元したいという思いで始めました。先日、大学院受験を控える生徒たちに模擬面接を実施しました。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (36)

 大学院入試の面接では「研究に対する姿勢」、つまり学術的・社会的意義を問われます。それを「論理的な思考」で説明できるか、そして「対応力」も見られています。先に質問した内容を表現違いで深堀りしてきたり、研究テーマに反論して揺さぶりをかけてきます。軽い圧迫面接みたいなものです。

 面接官は受験生に「適正」と「ミッション」を確認してきます。アートを通して社会の未来に貢献できる人材か否か(=大学院の株を上げてくれる人材か)、その資質を確認することで、ただの学歴ロンダリングなのか否かを見定めているわけです。

■(39)相手から揺さぶられた時こそ、視点の高い考えで撃ち返すチャンス

 プレゼンでも言えることですが、このように相手から揺さぶられる場面で「こなす」「さばく」「処理する」対応では、自身やアウトプットそのものを浅慮に見せてしまいます。面接とは「視点の高い考え」を理解してもらうための場ですから、積極的に提案するチャンスと考えて、しっかりと撃ち返してほしいものです。

 自身の研究テーマで、自身のクリエイティブで、社会をどう変えたいのか。人をどう変容させたいのか。独自のビジョンをアピールするべきだと生徒たちには教えています。ゆえに、自身と社会との関係を熟考する作業が必要になってきます。

 この「考える作業」を放棄してしまうことは、大学院側に「自分の考えを理解してもらわなくていい!」と自分で自分を見捨ててしまうことになります。どんなにアウトプット力が高くても、その概念を適当に説明して低い評価を下されてしまうのはもったいない。

 面接を突破するコツは、どんな質問をされても、「意思」とその「論拠」を示し、最後必ず「志望理由」に接続・接着して納めること。それを繰り返すだけ。併せて、修了後のビジョンも語ることです。事前に、これらの情報を繰り返し整理していくことで「意思→論拠→志望理由」の精度と強度が高められ、首尾一貫した論理性を身に着けられます。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。

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