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安全資産としての金(ゴールド)とその価格動向 前編
株式や紙幣、債券など、「紙に印刷される資産」はそれ自体に価値があるわけではなく、印刷物の発行体によってその価値が変化すると考えてよいだろう。例えば、株式などは企業の業績によって価値が変化するし、紙幣はその国の信用の度合いによって価値が変化するといった具合だ。
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一方で、「そのものが価値を持つ資産」もあり、その代表例が無国籍通貨とも言われる金(ゴールド)だ。では、金の価格がどのように決まるかと言えば、そこには様々な要因が存在している。主に挙げられるのが、米ドルとの相関性、外貨準備としての需要、そして地政学的リスクや物価変動など外部要因の影響だ。
まず米ドルとの相関性であるが、基本的には米国の金利が下がると、金の価格が上がると言われている。つまり逆相関の関係だ。金は米ドル建てで取引されていることもあり、単純に米ドルの価値が下がれば(米国の金利が下がれば)、金の価格が上がることになる。
次に、外貨準備としての需要だが、世界各国の中央銀行が外貨準備として金を購入し保有することで、金市場の需要と供給量に影響を及ぼし、金の価格を変動させることになる。これは外貨準備として保有している米ドルのリスクヘッジとして保有されるものだ。
ちなみに外貨準備とは、対外債務の返済や輸入代金の決済のほか、自国通貨の為替レートの急変動を防ぐための為替介入をする際に使用されるなど、国際取引を円滑にするためにあらかじめ準備をしている資産であり、基本的には米ドルが広く外貨準備として用意される。
つまり、外貨準備として保有している米ドルの価値が下がった場合、外貨準備全体の価値が下がることになってしまうため、そのリスクヘッジとして先に述べた米ドルの逆相関にある金を保有しているのだ。
例えばロシアは、外貨準備の約2割、フランスは外貨準備の約6割を金が占めている。特にロシアはこの5年で約4兆3,000億円の金を購入し続け、保有高を積み上げてきた。
では、どの程度の逆相関にあるのか、実際の米ドル相場(ドルインデックス)と金相場を比較してみよう。ちなみにドルインデックスとは、円やユーロ、ポンドなど、複数の主要国通貨に対する米ドルの価値を指数にしたものである。
まず、2020年5月1日のドルインデックスは99.100であったが、7月30日には93.009まで落ち込み、その下落率は6.1%であった。一方、金は2020年5月1日の1トロイオンス(約31.1g)1,701ドルから、7月30日の1トロイオンス1,955ドルまで値上がりしており、上昇率は12.9%である。完全な逆相関とまではいかないものの、米ドルと金は概ね逆相関であることがお分かりいただけるであろう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
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