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新型コロナが変えるもの! オフィスビル事業が構造不況業種になる?

2020年7月17日 07:49

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 富士通が6日に発表した、「グループ全体で約120万平方メートルの国内のオフィススペースを、3年間で半減させる」という方針は、日本人の不動産に対するイメージを一変させる可能性を持つ。

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 日立ではもっと早い5月26日、政府が緊急事態宣言の解除を行った翌日に、中畑英信執行役専務が「収束後も週2~3日の在宅勤務を続ける。働き方の新常態(ニューノーマル)を作る」と号令を飛ばしていた。既にオフィスに拘らない働き方へのうねりが起きていた。

 日立・富士通から刺激を受けるまでもなく、在宅勤務の有効性を認識した経営者は既に手を打ち始めている。現状の賃貸契約を見直し、賃借面積の縮小を検討することはもちろん、契約の解除と移転を具体的に進めている企業の存在が報じられている。

 例えば日本のオフィスビルにテナントとして入居している企業の半分が、賃貸スペースを半減させるとオフィス需要の25%は蒸発して、オフィスビル事業は「アッ」という間に構造不況業種の仲間入りをする。ただでさえ、人口減少と高齢化が同時進行中の日本では、現状でも不動産需要が緩慢に低下していくことは避けられない。

 今回、日立が先鞭をつけ、富士通が規模を明確にして巻き起こった「働き方改革」は、議論の暇(いとま)も与えずに、日本のビジネス街を一変させる力を持っている。いずれ、日本のオフィス街に所在するオフィスビルは、一時的に歯が抜けるような虫食い状態になったのち、経済原則に従って、築年数が浅く割安なビルにテナントが集まる筈だ。

 ただ古いだけのビル、需給環境に胡坐(あぐら)をかいた割高なビル、利便性の劣るビルからは撤退するテナントが続き、手っ取り早く賃料の引き下げでテナントをつなぎとめようとする、負のスパイラルが始まる。目端の利くビルオーナーは業態の転換を試行して、辛うじて第一線に踏み止まるだろうが、賃貸オフィスのスペースだけを売り物にしていたようなビルオーナーは退場を迫られる。

 オフィス街に通勤する人が減少すると公共交通機関の収支は悪化し、ビジネスワーカーを対象にしていた物販店・飲食店や居酒屋が淘汰されるのは、自然の成り行きのようなものだ。

 ビジネスワーカーによる公共交通機関の利用減少や、昼食は自宅で済ませ(買い食いであっても)、勤務終了後に同僚と居酒屋に向かうことがなくなれば、自宅近隣での消費活動が盛り上がることは考えにくいうえに、居住地が拡散しているため在宅による経済効果を測定する手法も限られる。

 通勤で体力を消耗させることがなくなり、日々の飲食にかける経済的な負担が減少した人々が、余裕の生まれた体力と財布をどんな方向に振り向けるのかが注目される。

 何年か後には、今までと違った消費活動と、余暇の過ごし方が生まれている可能性がある。それを感じ取る嗅覚を持った人の中から、新しい時代のビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズが誕生するかも知れない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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