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ネイティブ並みの発音を習得したい人必見! インプット洪水の重要性
外国語学習において12歳を境にネイティブ並みの発音獲得が困難になる。この思春期を臨界期とする説については前回詳しく説明した。また、臨界期という障害を乗り越えるためには、強い動機付けが重要であるということを同時に述べた。
【こちらも】ネイティブ並みの外国語発音を習得! 強い動機付けが臨界期の壁を越える
ネイティブ発音の獲得には、動機付け同様に学習初期におけるインプットの洪水が重要である。その後発音に特化した短期集中訓練を行うと、効果的に正しい発音が習得できるのだ。方法と注意点について説明する。
■学習初期のインプット洪水と短期集中発音訓練の具体的な方法
ネイティブ発音を聞き取るためには、大脳皮質のウェルニック感覚性言語野に英語野(自分の学ぶ外国語の言語野)を形成する必要がある。そのためには、学習初期に徹底してリスニングを行うことが重要なのだ。リスニングの重要性については下記の記事を参考にしてほしい。
具体的な学習方法は下記の通りである。
1. 最初は3~5秒以内の外国語音声を聞いてから復唱する練習を行う。聞き終わってからテキストを見て、聞き間違いを訂正してまた聞き取ることを繰り返す。これは発音学習ではなく正しく聞き取るリスニングの学習である。復唱は意味を正しく聞き取っていることを確認する作業である。
1回聞いただけで覚えられる言葉や記憶の長さを瞬時記憶スパンという。学習初期の瞬時記憶スパンは通常3~5秒以内だが、繰り返し学習するとスパンが伸びていく。最終的には7~10秒程度の短文を記憶できるようになっていく。
2.ある程度慣れてきたら会話文を聞き取る練習を、次に短文、と音声の長さと内容を徐々にレベルアップしていく。ほとんどの参考書では短く優しい文章から徐々にレベルアップする形式で作成されている。
3.通勤途中などでも、外国語音声のリスニングを行い、後で必ずテキストを見て聞き間違いを訂正し単語や文法を覚える。
約100時間、2~3カ月で脳に言語中枢が形成され、音韻が正確に聞き取れるようになる。その後は単語の発音練習を本格的に始めると同時に、シャドーイングやディクテーションでリスニングを強化していく。
リスニングの洪水、発音学習の教材には、東京外国語大学の学習モジュールが最適である。詳細は下記の記事を参考にしてほしい。
27言語が学べる「東京外国語大学言語モジュール」の上手な活用方法
■リスニング学習の注意点
1. ネイティブスピーカーの自然な速さのものを聞く。話すスピードが極端にゆっくりな音声を大量に聞くと、ゆっくりした発音しか聞き取れない神経回路網が形成されてしまう。
2. 脳に言語野を形成する段階では、テキストを見ながら聞いてはいけない。文字を見ながら聞かないと聞き取れない神経回路網が形成されてしまう。
■ネイティブ並みの発音を習得するのに必要なその他の事項
1. 学習者がネイティブスピーカーのように発音したいと強く望む
2. 外国語を日常的に使用する環境
3. 言葉を学ぶ国の文化に対する共感、尊敬
4. 豊富なリソース(テレビ、ラジオ、ドラマ)の活用。
5. 音声化した発音学習方法(例:シャドーイング)を実践・継続する。
6. 外国語教師、指導者からの適切なフィードバック
ネイティブ並みの発音の獲得は必要か?という疑問に関しては意見が分かれている。「ネイティブと区別がつかないレベルまで発音を磨く必要があるのは、スパイくらいなものだろう」という考え方もある(Singleton,1995)。
しかし、話の内容が正確に伝わらないのでは会話が成立しないし、発音が不正確で何度も聞き返されると、学習を続けようという気持ちがくじけてしまう。発音の短期集中訓練で正しい外国語の発音を獲得すれば、次の言語を学ぶときに新たに習得すべき発音が減るという利点もある。
動機付けや習得順序など、ちょっとした工夫でネイティブ並みの発音に近づけるのだから、ぜひトライしてみてほしい。(記事:薄井由・記事一覧を見る)
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