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ソフトバンクGと孫会長の天国と地獄 (14) SVFは10年間で3兆円超の利息支払か
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ソフトバンクグループ(SBG)がサウジアラビアの「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」と、アブダビ首長国の「ムバダラ・インベストメント・カンパニー」という政府系ファンド(サウジ・アブダビファンド)に対して許容した、確定利回りと元本保証というファンドの条件は重い。
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4.5兆円の出資に対して7%の利払いが毎年行われるとなると、ベンチャーキャピタルの想定する10年間の運用期間中であれば、3.15兆円の利息が払われる計算だ。ちなみに、7%の複利で運用を続けると仮定すると10年後の元利合計金額は出資額の約2倍、9兆円弱に達する。
元本保証を字面通りに受取ると、利益を計上した年度の配当は受取るが、損失を計上した年度にロスは発生しないという、サウジ・アブダビファンドにとっては”いいとこ取り”のような破格の条件だ。仮に運用成績が毎年交互にプラス10%とマイナス10%の幅で振幅を繰り返し、10年目を迎えたと仮定すると、5カ年分の運用益は合計で2.25兆円になる。
つまり、サウジ・アブダビファンドは10年間に、利息と配当の合計額として5.4兆円(3.15兆円+2.25兆円)を受取る計算だ。
同様の計算を合計2.2兆円を出資した一般投資家グループに当てはめてみると、累計でプラマイゼロになる。実際には勧進元のSBGの経費が控除されるため多少の目減りを覚悟する程度で収束しそうだ。
問題はSBGだ。SVFの運用成績がプラス10%とマイナス10%の幅で毎年振幅するため、10年後の運用益は±ゼロになる。サウジ・アブダビファンドに約束した7%の確定利回りと元本保証を前提にした配当は、毎年SBGが一時的な立替払いをすることになるが、支払い原資は何処にも存在しないため、合計額5.4兆円は全てSBGが被ることになってしまう。
この例は、評価額が10年間に渡って上下動を繰り返しながらイーブンで終了した場合でも、確定利回りと元本保証が祟って、10兆円ファンド総額の過半を超える程の持ち出しがSBGに生じるということを示す。「可もなく不可もなし」の状態で終了してもこんな結末が予想されてしまうのだ。
最終的な運用結果は7年後にならなければ確定しないので、実際にはよりダイナミックな変動となるかも知れない。新型コロナの終息に2~3年の期間を要するとしたら、その時は既にファンド運用期間の折り返しに当たる。想定以上の成果を出すにしても、期待を裏切るような惨憺たる結果を迎えるにしても、新型コロナウイルスが世界にどんな後遺症を残して行くのか、ということに左右されるのかも知れない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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