大戸屋HDの創業者の長男は、果たして親父を超えられるか

2020年6月5日 07:25

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 一口に言えば「大戸屋 ごはん処」は、いわゆる定食屋チェーンの走り。だが私は2016年2月まで件の定食屋の存在を知らなかった。運営会社の大戸屋ホールディングス(HD)で内紛があり、実質上の創業者:三森久実氏の長男で常務だった三森智仁氏が辞任したニュースに接した時に初めて知った。

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 内紛は59歳という若さで急逝した、(会長だった)久実氏への功労金支給などを巡った窪田健一社長との対立だったという。1年余り続いたという内紛の経緯・具体的な対立点などには、さしたる興味は抱かなかった。「取材を」という食指がなぜか動かなかったからである。

 むしろ職を辞し株主として大戸屋HDと表舞台で争う方法を選んだ(と伝えられた)智仁氏が、その後はどんな生き方を選ぶのかに興味を抱いた。「どんな生き方を」はどんな「争い方をするのか」ではない。起業家の血を受け継いでいるはずの29歳の若者が、どんな人生を歩みだすのかを知りたかった。

 智仁氏の消息を知ったのは、18年4月になってからだった。スリーフォレストという企業を立ち上げ「競争激化」が指摘されていた「外食宅配市場」に「ハッピーテーブル」という名称の事業で参入したというのである。

 大戸屋HDに明るいアナリストは「17年6月の株主総会で対立に一区切りついたことから智仁さんも、胸の中にしまってあった思いを実現しようと考えたのだろう。智仁さんは短い期間だが現場の店長も体験している。その折に接した客の“明日から施設に入るので、食べ納めに来た”という一言が忘れられないと言っていた。ハッピーテーブルの原点は“外食が難しい高齢者に馴染んだ家庭の味を届けたい”だったのだろう」とした。

 私が「ヘルスケア関連企業株価研究」なる拙稿を掲載している週刊紙「高齢者住宅新聞」の記者にスリーフォレスト/ハッピーテーブルについて教えをこうた。

 「ハッピーテーブルは、出前を受けるプラットフォーム。吉野家などナショナルチェーンの外食店のメニューを揃えている」

 「利用するのは高齢者施設に入居している、あるいはデイサービスの利用者。専用のソフトをPCやスマホにインストールすれば、近隣の外食店が表示されて好きなメニューが選べる。具体的には施設のスタッフが注文を聞き、注文を代行する」

 「注文品を受け取りに行くのも概ね、施設のスタッフ。価格は店頭価格と同じ。配達料は取らない代わりに店頭価格の10%前後を割引。導入施設はそのお金をスタッフの福利厚生費等に充当する」

 創業者起業家の跡取り息子の起業の今後を、ウオッチしていきたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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