アサヒ・キリン・サントリーの飲料水WAR

2020年5月7日 07:37

印刷

アサヒ飲料が5月6日から放送している新CMの一場面。(画像: アサヒ飲料の発表資料より)

アサヒ飲料が5月6日から放送している新CMの一場面。(画像: アサヒ飲料の発表資料より)[写真拡大]

 「ビール+清涼飲料水」の売り上高ランキングは、アサヒグループHD・キリンHD・サントリー食品インターナショナルが上位3社。だが指摘されるように、ビール類の売り上げは各社とも頭打ち状態にある。

【こちらも】競争激化ドラッグストア業界でキリン堂が好調な理由

 業界アナリストは「各社ともアサヒの海外戦略やキリンのクラフトビールへの注力に象徴されるように、壁の突破策を執ってはいる。が、一方で清涼飲料分野での独自、差別化に注力しているのが現実」とする。

 清涼飲料水の歴史については、「炭酸飲料水を発明したのは、かのクレオパトラだ」「アダムとイヴの時代に、清浄な水に果汁を混ぜたものが飲まれていた」といった類の珍説・迷説の類が多々ある。唯一、信頼できるのは全国清涼飲料連合会が発信している「説」くらい。

 「1770年頃、ジョセフ・プリーストリー(英国の自然哲学者・教育者・神学者)なる人物が世界初の清涼飲料水を発明した」。何故そうした立場の御仁が、については説明されていないが「炭酸ガスを水中に飽和させる方法を編み出し、炭酸飲料の製造法を考案した」という。

 また、日本に清涼飲料の類が持ち込まれたのは1853年。歴史の教科書でも出会える「ペリー来航」。飲料として炭酸レモネードが持ち込まれた。それがのちに国内でも製造されるようになり、「ラムネ」と呼ばれ広まったのだという。

 清涼飲料水と一口に言っても、種類は多岐にわたる。連合会の資料を見ると生産量のベスト3は「炭酸飲料」「ミネラルウォーター」「コーヒー系飲料」。またここ5年間に限ってみると「健康志向」の高まりから「ミネラルウォーター」「緑茶」「茶系飲料」が伸びているという。

 アサヒグループHDでは今期(12月期)の事業方針の中で、「炭酸飲料の強化」「新価値創造商品の投入」を掲げた。前者は「三ツ矢サイダー」の爽快感の強化。ために328万人を対象のサンプリングや47都道府県でのエリアプロモーション、「氷点下自販機拡大」を行い4月にリニューアル商品を発売。後者では例えば、1世紀を迎えたカルピスに豆乳を発酵させて作った「グリーンカルピス」を4月に発売した。

 キリンHDは前期(12月期)に天候不順下で貢献した「小型ペット」商品を拡充。実績を積んできた「午後の紅茶」は「おいしい無糖」の強化、3月発売で上々の滑り出しを見せている「ザ・マイスターズ ミルクティー」への注力を打ち出している。加えてクラフトビールの主力「ミャンマービール」の積極化。

 サントリー食品は好調な推移を示している「BOSS」や「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」を前面に押し出す方針。

 ビール同様に清涼飲料水も夏場の天候に動向が左右される。今夏は「コロナウイルス禍」の収束方向に胸を撫でおろし、適当な炎天下で清涼飲料水が楽しめる「脱巣籠生活」を楽しみたいものである。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事