加熱しても固まらず、“ヒーロー”のような働きもつHeroタンパク質を発見、東大

2020年3月17日 07:04

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「Heroタンパク質」の機能概要。上は、機能的なタンパク質をストレス環境(乾燥、高温、有機溶媒など)から保護する機能。下は、凝集しやすいタンパク質が凝集してしまうのを防ぐ効果。(画像: 東京大学の発表資料より)

「Heroタンパク質」の機能概要。上は、機能的なタンパク質をストレス環境(乾燥、高温、有機溶媒など)から保護する機能。下は、凝集しやすいタンパク質が凝集してしまうのを防ぐ効果。(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]

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 タンパク質を熱すると通常は凝固して本来の働きを失ってしまう。しかしクマムシのような高温や低温、乾燥のもと生きられる生物は、熱耐性タンパク質を持っていることが知られている。東京大学の研究チームは、世界で初めて、通常の環境に住む生物も熱耐性タンパク質を持っていることを明らかにし、このタンパク質を「Heroタンパク質」と名付けた。

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 この形の定まらない「へろへろ(=Hero)な」タンパク質は、過酷な環境や老化に伴って起こる通常のタンパク質の変性を防ぐなど、重要な役割を果たしていることを明らかにした。

 今回の研究を行ったのは、東京大学の坪山幸太郎学振特別研究員、泊幸秀教授らの研究チームだ。

 アミノ酸がつながってできているタンパク質は、筋肉や酵素など体で重要な働きをしている。例えば赤い肉を熱湯でゆでれば、茶色く変色し固くなる。これがタンパク質の変性だ。

 様々な機能を果たすための複雑で繊細な立体構造を持っているからこそ、タンパク質は熱により結合が崩れ凝集し、本来の形を保てなくなってしまう。また神経性の病気にタンパク質の凝集が関わっていることが知られている。

 研究チームはまず、人やハエの細胞の溶解物を95度で熱し、固形物を取り除いた。残った液体部分に溶けているタンパク質を調べ、人にもハエにも100種類以上の熱耐性タンパク質が存在していることがわかった。

 このタンパク質を熱耐性で(Heat-resistant)機能がわからない(Obscure)タンパク質、Heroタンパク質と名付けた。形が決まっていない「へろへろ」という意味も含んでいる。何も加えずに酵素を乾燥させると活性を失ったが、上澄みを加えると酵素を保護し、働きを保った。

 さらに検討するために、Heroタンパク質のうち主な6種類について、大腸菌を用いて、ヒト組み換えHeroタンパク質を作成した。

 乳酸脱水素酵素を乾燥させると、その活性は10%以下に下がる。一方各Heroタンパク質を加えて乾燥させた場合、活性は50%ほど保たれ、従来の安定剤であるアルギニンやトレハロースを大きく上回っていた。

 またGFP(蛍光を発するタンパク質)をクロロホルムにさらしたところ、蛍光強度は10%程度に低下した。しかし4つのHeroタンパク質の存在下では蛍光強度は60%以上保たれた。特にそのうちの1つでは蛍光強度はほぼ減少しなかった

 次に細胞の中でHeroタンパク質がどのように働くかを調べた。ヒト培養細胞にHeroタンパク質と発光酵素を同時に発現させ、その細胞を熱処理したところ、Heroタンパク質を持たないものよりも倍以上酵素の働きを保っていた。

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)、前頭側頭型認知症、ハンチントン病などでタンパク質の凝集がみられる。しかし一緒にHeroタンパク質を発現させると、病原性のタンパク質凝集も抑えられた。

 さらにショウジョウバエの体内におけるHeroタンパク質の働きを調べた。ハエの目でタンパク質凝集が起こって網膜が変性する疾患モデルで、Heroタンパク質は変性を効果的に抑制した。Heroタンパク質を作れなくしたハエでは死亡してしまうものもあった一方、過剰に作るようにしたハエでは、寿命が30%も延長したものがみられた。

 このようにHeroタンパク質は他のタンパク質を保護する作用があり、今後タンパク質を用いた医薬品などの安定剤として使用できる可能性があるだろう。また培養細胞やショウジョウバエでは、神経性の病気に関連するタンパク質の凝集を抑制したことから、治療や診断へつなげいくことが期待できそうだ。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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