北大、ザンビアで鉛中毒の状況を調査 治療計画策定や予防に活用へ

2020年3月9日 18:14

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鉱床の土壌を採集しに来た近隣住民(左)と、鉱山から500mしか離れていないところにある家屋(右)。(画像: 北海道大学の発表資料より)

鉱床の土壌を採集しに来た近隣住民(左)と、鉱山から500mしか離れていないところにある家屋(右)。(画像: 北海道大学の発表資料より)[写真拡大]

 鉛中毒は子供の神経損傷や痙攣、大人に対しても血圧上昇や生殖器異常など深刻な健康被害をもたらすことが知られている。アフリカ南部にあるザンビアのカブウェ市は、20世紀に鉱山街として発展したが、現在でも住民の鉛中毒が深刻な問題となっている。そこで北海道大学とザンビア大学の共同研究グループは6日、政府が治療計画を立てるために必要な被害状況の調査を実施したと発表した。

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 共同研究グループは、2017年7月から8月にかけて、カブウェ市内の医療施設13カ所において、住民1190人から血液の採取を行った。測定対象は重大な健康被害が発生しやすい9歳以下の子供562名および、その親たち628名とされ、血中鉛濃度の測定では、「LeadCareII」という時間やコストがかからない測定機材が活用された。

 測定結果は、鉛鉱山に近い集落の住民ほど体内に多くの鉛を含む傾向を示すものとなった。カサンダと呼ばれる鉛鉱山の近くの村落では、住民の平均血中鉛濃度が45.7マイクログラム・デシリットルと高い値であった。一方で、鉱山から30キロメートル離れたハムドゥドゥという村落ではその10分の1以下の血中鉛濃度であった。

 また、鉛鉱山の風上か風下かも住民の血中鉛濃度に影響を与えることが判明した。鉛鉱山の風下にある村落の住民は、風上の村落の住民よりも血中鉛濃度が高い測定結果が得られている。

 さらに重要なことは、子供と大人で比較した場合、子供の方が血中鉛濃度が高い傾向がみられたという点である。特に9歳以下の子供の5人に1人は血中鉛濃度が45マイクログラム・デシリットルを超えていた。これは早急な治療が必要な数値であり、政府による対策が求められる。

 今回の成果は、治療計画を立てることのみならず、鉛汚染のメカニズムを把握するためにも有用である。同じような鉛中毒被害を今後は出さないために、予防策を実行することも必要となってくる。

 本研究の成果はChemosphere誌のオンライン版にて公開されている。

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