5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (27)

2020年2月28日 07:20

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 2月14日、皆さんは誰かに「ふんどし」を贈りましたか?じつは2月14日は「ふん→2 ど→10 し→4」で、「ふんどしの日」なのです。今日は、私が4年前に実施したふんどしプロモーションについてお話しします。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (26)

 ふんどしは今や絶滅危惧下着なのですが、ゴムで穿くパンツとは異なり、ヒモで締め付け調整ができるノーストレスな快眠下着という良さがあります。ただ、このベネフィットが購買動機につながる人はごく少数でした。

 そこで、日本ふんどし協会は「愛する人にふんどしを贈る、ふんどしの日(2月14日)」を定め、ギフトでの需要拡大を戦略として打ち出しました。プレゼントされる側としては一度は試し履きするでしょうし、そこで快適性を認知する可能性もあります。そうして2011年から都内のデパートで始められた「ふんどしの日フェア」でしたが、広く認知されていない状態での開催だったため、集客できない年が続いていたそうです。

 この業務は「ふんどしの日(2月14日)」の認知向上・定着と、フェアを主催するふんどしブランド「SHAREFUN」のギフト需要拡大という2つがミッションでした。潤沢な予算はありません。

 認知向上のためには「ふんどしの日」の意義・価値を実体化させ、生活者に「ふんどしの日」の必要性を感じてもらうことが不可欠。売り場だけでなく、公共の場でその意義を可視化させることが「ふんどしの日」の認知を早めると私は考えました。

 ひとりブレストで商品のふんどしを眺めていたら、「あれ、電車の中吊りポスターとサイズ感、似てない?」と気づき、測ってみたら、天地左右がほぼ同寸でした。

 じゃあ、電車をふんどしポスターでジャックしてみるか!そこで何を言うか?いや、双方向のメッセージングにしてエンゲージメントさせなきゃ拡がらない。そう、参加型にしよう!という具合に一気に企画が立ち上がりました。

 その後すぐにデザイナーのK嶋さんを誘い、掛け合い15分という過去最速の打ち合わせでプロモーション企画をまとめた後、私はプロモーションを貫くスローガンを開発しました。

 「2月14日は、ふたりを結ぶ、ふんどしの日。」

 これをコアに、公開告白プロモーションを組み立てて、実施したのです。その名も「愛のふんどし告白電車」。

 黄色いふんどしに愛の告白文を直筆で応募者に書いてもらい、それを電車内に中吊りポスターとして吊り下げる。そして、片思いの相手にそれをわざわざ見に来てもらうのです。つまり、車内を「告白イベントの会場」にしてしまう企画でした。

 掲出媒体はカップルが多く乗車する江ノ島電鉄。小学生から70代、外国人を含む42人の愛のふんどしを載せた告白電車が2月8日から14日まで運行されました。

 私は反応を直に見たくて、毎日のように江ノ電に乗り込みました。車窓には真っ青な海。車内には黄色いふんどし。それを先頭車両の端から一眼で激写する一般カメラマン。笑顔で写メして拡散する乗客の人々。そして、愛の告白を見に来た当事者たち。

 ふんどしポスターの中には、エグい関係の告白文もありました。これこそリアル。本音・本気のメッセージでした。それらの告白はシャレのわかる多くの寛容な人々によって受け入れられ、「ふんどしの日」はフジテレビのニュースやテレ東の情報番組、雑誌など多くのメディアにオーガニックに取り上げられました。

■(29)アンサー企画を設けて、双方向にコミュニケーションさせれば地上戦でも十分戦える


 当然、愛の告白には「返事」が必要です。そこは抜かりなく、ホワイトデー週間の3月8日から14日にかけて、告白相手からの返事を載せたアンサートレイン「白いふんどしお返事電車」を走らせました。ここでもYES,NOを突きつけたリアルなお返事ポスターを掲出したのです。

 往路だけで終わらせず、復路できちんと「告白の行方」を公表する。このシビアさがあったからこそ、プロモーションの完成度が高められ、傍観者である乗客(生活者)とエンゲージメントできたのだと思います。

 結果として42人の愛の告白から14組のカップルが誕生しました。ふんどしによって固く結ばれたカップル、33.3%。悪くない成立率ではないでしょうか。SHAREFUNについては、このプロモーション効果で数十店舗の小売店との商談が成立し、売り上げは前年比をはるかに上回る数字となりました。(この企画、じつは実施の10年以上前から温めていたもの。何度も何度も出し続ければ、いつかはアジャストするものですね)

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。

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