混迷する大学入試、だからこそ早めの小論文対策を

2020年2月27日 08:13

印刷

■早めの小論文対策が受験機会を増やすカギ

 大学受験生が年々減少し、大学入試全体で見れば、大学に入りやすくなっている。それなのに首都圏私大を中心として、大学入試の状況は混迷を深めている。

【こちらも】大学入試「要約力」習得のススメ

 首都圏私大のセンター利用による合格者のボーダーラインが、立教、明治、青山で軒並み9割前後という異常事態である。模試のA判定など何のあてにもならない。

 大学入学共通テストの迷走、首都圏私大の難化傾向を受けて、AО入試、推薦入試で早期に進路を決めようという傾向がでている。そこで、チャンスを広げるために求められるのが、早期からの小論文対策である。

■AО入試→公募推薦入試→一般入試でチャンスを広げる

 最終的に首都圏私大が第1志望であっても、地方の国公立大のAО入試からチャレンジしてみる。首都圏私大トップのAО入試は、全国大会入賞レベルなどの特殊な能力が求められるため、AО入試から始めるなら、地方の国公立大学がオススメである。

 とはいえ、AО入試は定員が少ないため、高倍率になることが多い。それでもなぜAО入試からの受験をすすめるかというと、早期に志望理由書を書いて面接試験が受けられる、小論文対策を始められる、現場を早く実体験できるからである。

 「やっぱり、AОダメだった…」それは折り込み済み、1度面接試験で現場の大学の先生からたたいてもらった志望理由書を書き上げて、公募推薦にのぞむのだ。

 さらに、大学受験生は小論文を後回しにしがちである。だから、早期から小論文対策を始めるメリットは計り知れない。慶応大学が第1志望である受験生は早期から小論文対策を始めるが、そうではない普通の受験生は、周りで推薦入試が話題になると自分も受けてみようかな、と考え、推薦受験をする。その段階で「小論文がある」と気がついて小論文対策をする。

 いざ書き始めてみると、思ったより書けない。何が書けないかというと、構成や表現というテクニック的なことではない。そのようなものは少し練習をすればどうにでもなる。

 結論の独自性などそもそも必要ない。あるテーマに即した結論など、ありきたりの常識的なものになるに決まっている。「でも、他の人とは違う意見を…」と考える受験生は、結局論証ができないまま終了である。

 大学入試の小論文でどうにもならないのが、「ネタ」、すなわち結論の根拠づけ、論証である。常識的でよいので、自分の結論をしっかり述べる。それを第三者に納得させるためには、客観的な裏付け(エビデンス)が必要である。誰もが知っている、客観的に確定した事実、すなわち具体例が論証には不可欠である。

 「おじいちゃんが昔…」個人的事実は、客観的な裏付けになってくれない。「人から聞いた話だが…」伝聞はそもそも事実たりえない。明確なエビデンスになってくれるのは、時間空間の中で確定した事実だけである。

 「時間」の流れの中で確定した事実を「歴史」といい、「空間」の広がりの中で確定した事実を「ニュース」という。小論文が決定的に書けない受験生に共通しているのは、書き方などのテクニックではない。このエビデンス、論証する「ネタ」が決定的に欠落しているのだ。

■小論文で合格!のカギは「ネタ」を集める時間にあり

 早期のAО入試から小論文対策を始めた受験生は、自分に論証する「ネタ」がないと気づくことができる。「政治論」「科学論」「生命論」など、「えーと?」といったテーマの数だけ頭の中にクモの巣状のネットワークが作られていく。

 あとは日本史、世界史の授業が、新聞、ネットのニュースがそのネットワークに引っかかってくる。日々、通り過ぎていく情報が小論文のネタとしてストックされていく。だから、早期から小論文対策をした方がチャンスが広がるのである。

 AО入試をたたき台にして、推薦入試にチャレンジ。一般入試でダメだったら国公立の中期、後期までチャレンジしていく。そうすれば受験機会は2倍、3倍に増える。ほとんどの受験生が後回しにする小論文対策を早期に始めることの意義は、やはり計り知れない。(記事:大学受験国語のフットプリンツ 谷村長敬・記事一覧を見る

関連記事