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弱い相手と対戦すれば最適な運動戦略へと導かれる 東京農工大の研究
研究の概要(写真:東京農工大学の発表資料より)[写真拡大]
スポーツでの適切なプレイや戦略は、運動パフォーマンスを向上させるのに不可欠だ。東京農工大学は1月27日、弱い相手との対戦が個々の運動能力に対して最適な運動戦略へと導かれることを明らかにしたと発表した。
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■スポーツに求められる戦略
スポーツにおいて、得点する可能性と失敗の危険性とを天秤にかけ個々のプレイが決まる。プレイヤー自身の身体能力を考慮して適切に狙いを定めることは、パフォーマンスの良し悪しにかかわってくる。
ヒトにおいて自身の能力を超えた危険性の高い戦略を好むという行動特性が知られている。認知レベルでの誤った選択が、運動パフォーマンスを低下させるという。だがこのような認知バイアスを抑え、パフォーマンスの低下を防ぐ方法は発見されてこなかった。
■対戦相手の強弱で変化する運動戦略
東京農工大学の研究グループは、さまざまな相手と対戦する際のプレイヤーの運動戦略を定量化した。テニスやサッカー等のスポーツにおけるライン際やポスト際などを狙う事例を参照し、「どこを狙っているか」という戦略を定量化したという。
その結果、1人で練習を継続する場合や強い相手と対戦する場合には、危険性の高い戦略が選択され続けた。他方対戦相手が弱い場合には、自分の運動能力に見合った戦略が促されることがわかった。
対戦相手の影響を分析した結果、対戦相手が弱くなり続けてもプレイヤーは最適な戦略を保つという。
またコンピューターシミュレーションで相手の勝率を計算したところ、プレイヤーが選択した戦略は勝率を最大にするうえで最適な戦略であることが判明した。1人で練習するよりも相手の存在で戦略の変更を促し、弱い相手では最適な戦略へと導かれることをこの結果は示唆するという。
研究グループは今後、実際のスポーツのデータで運動プレイヤーの認知バイアスを評価し、本研究成果が示す手法の有効性を検討することで、パフォーマンスの向上を支援できるだろうとしている。
研究の詳細は、国際学術誌Scientific Reportsにて22日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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