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魚類の尾ヒレ再生メカニズムは両生類の場合と異なることが判明 東北大の研究
左は、両生類の四肢再生における位置記憶のモデル。右は、今回明らかになった魚類のヒレ再生における位置記憶のモデル。それぞれの数字は基部先端部軸における仮想的な位置記憶を示す。(画像: 東北大学の発表資料より)[写真拡大]
魚は尾ヒレなどのヒレを切られても、元の形を復元しながら再生することはよく知られていたが、メカニズムについてはこれまで不明だった。東北大学は21日、ゼブラフィッシュを用いて尾ヒレの長さを詳細に計測し実験を行った結果、ゼブラフィッシュは切られた尾ヒレの長さを認識していることが分かったと発表した。
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魚類の尾ヒレを切断すると、その傷口には「再生芽細胞」と呼ばれる特殊な細胞が形成されて新たな尾ヒレを形作る。イモリなどの両生類の場合は、この再生芽細胞が位置記憶をもつことが知られている。つまり、両生類の場合は切られた位置を細胞が記憶しているのである。しかし、魚類が同様のメカニズムで四肢再生を行っているかは論争がなされてきた。
そこで研究グループは、ゼブラフィッシュの尾ヒレを支持する「鰭条」と呼ばれる骨格に着目した。鰭条ごとに再生時間と成長速度を測定すると、鰭条によってそれぞれ異なることが判明。さらに、同じ鰭条でもより深い位置で切断した方が元に戻るのに長い期間がかかることも分かった。
これらの結果を統計的に処理すると、最終的な決定要素は「切断されている鰭条の長さ」であることが示唆された。つまり、ゼブラフィッシュが認識しているのは切られた尾ヒレの長さということになる。
これらのメカニズムより、両生類と魚類とで再生の仕方が異なるということが示された。つまり、両生類は切られた位置を記憶するのに対して魚類は切られた長さを認識しているという点が違いになる。
今回の研究成果は、生物がどのように失われた構造を認識して再生するかという問題に対する、新たなメカニズムの提案となる。両生類や魚類だけでなく、ヒトの器官再生などにおいてもメカニズムを理解することは必須であるため、今回の成果が将来的には、ヒトの器官再生にもつながりうる可能性ももつ。
今回の研究の成果は、20日付のScientific Reports誌のオンライン版に掲載されている。
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