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動物の果実食による種子の移動は温暖化から樹を守らない 森林総研らの研究
哺乳類による種子散布の模式図。(画像:森林研究・整備機構の発表資料より)[写真拡大]
動物が果実を食べ、そしてその種子を別の場所で糞と共に排出することを種子散布という。しかしこれに伴う移動は、温暖化に対する山林の対策となる高標高方面への移動には役立たないことを、森林研究・整備機構、東京農工大学、総合地球環境学研究所の研究グループが突き止めた。
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樹木は自ら動くことがないため、地球温暖化に伴う気温上昇から逃れて移動するためには、種子を気温の低い山の上か、或いは北方へと散布する必要がある。ただ、標高差100メートルを越えるような長距離間での種子の移動が、具体的にどのように行われるかは、過去に研究例がほとんどなく未知であった。
研究グループは過去に、夏に結実する野生のカスミザクラに関する研究から、ツキノワグマなどの哺乳類が種子を高標高地に移動させることを突き止めていた。これはこの種のサクラが温暖化に対して有効な手段を持っているということを意味するが、しかし、果実の結実期の多くは秋に集中する。
仮説としては、秋に結実する果実は、山頂から山麓方向へと結実が進み、それとともに動物たちも山を下りるように移動するわけなので、種子散布もまた低標高地に向かって行われると考えられた。
今回の研究は、東京都奥多摩地方において、野生のサルナシを対象に行われた。サルナシは日本列島の原生種であるが、同じマタタビ科マタタビ属に属することから、キウイフルーツによく似た果実を持つ植物である。
研究は2010年と2011年、標高550メートルから1650メートルにかけての一帯で行われ、哺乳類の糞を採取し、そこからサルナシの趣旨を取り出した。サルナシを食べている哺乳類は、多い順にタヌキ、ツキノワグマ、ニホンザル、テンの4種でほとんどを占めていた。
結果として、タヌキを除いた3種において、種子散布はやはり低標高地で行われているため、地球温暖化の悪影響は山林の生態にも及ぶと予測されるという。
研究の詳細は、Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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