いまどき造ってよいのか? ロードゴーイングレーシングカー「マクラーレン620R」

2019年12月19日 10:44

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「マクラーレン620R」(写真: マクラーレンの発表資料より)

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  • 「マクラーレン620R」
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 COP25で日本が石炭発電を放棄しないことに批判が集中している時代、こんな車が造られてよいのであろうか?と思わせる一台だ。「マクラーレン620R」は、GT4チャンピオンシップに出場資格を得る目的で造られたレース専用カー「570S GT4」のロードゴーイングバージョンだ。マクラーレン・オートモーティブが2020年1月より限定350台を製作販売する。納車開始は2020年2月より。車両価格は3750万円と、この類のクルマとしてはかなり安く感じるが、内装などはシンプルなのであろう。

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 時折こうした車が発売されるが、それはレースに出場資格を得るために量産することが主な理由だった。「マクラーレン620R」はどうなのであろうか。GT4に限らずレース規定に合わせることを想定しているようで、特定のレースのホモロゲーションではないようだ。

 「マクラーレン620R」のボディサイズは、全長:4557×全幅:1945×全高:1194mm、ホイールベース:2670mm、乾燥車両重量:1282kg。DIN重量(燃料の90%と油脂類、冷却水などを含む)で1386kgであることは、もしEVに設計したとすればバッテリー重量を100kg程度に収めれば良いことになる。

 これは実用車でも指針になる数字で、1充電航続距離500kmを実現するのにガソリン車のDIN重量に近づけるには、バッテリーで100kg程度のエネルギー集積率とすればよいことになる。現在の5倍程度なのであろうか?実用化のために実現しなければならない目標は充電時間を短縮することだ。

 パワーソースは、3.8リッターV8ツインターボエンジン。最高出力620PS、最大トルク620N・m。7段ATでMRとなっている。0-100km/h加速2.9秒、最高速322km/hの性能。レース場以外では無用の長物だ。

 カーボンファイバー製シャシーによって、十分な剛性と軽量化を図っている。32段階調整式のモータースポーツ用ダンパーや、カーボンセラミックブレーキで足回りを固めているが、こうしたレーシングカーの装備は決して無駄にはならない。少しずつ市販車に還元されていく技術開発である。

 マクラーレンはレーシングチームだが、ホンダ、トヨタなど多くの自動車メーカーも「走る実験室」としてレーシングカー開発を行い、レースで培った技術を市販車に還元している。

 ポルシェチームなどはストレートに市販車に繋げている部分が多いが、トヨタなどもレースで磨いた技術を市販車に繋げている。トヨタ・ヤリスWRCなどがそのよい例だ。最近のトヨタのクルマにおいて、サスペンションセッティングが良いところは、こうしたレース活動の集積であると言える。しかし、これからの「自動運転で運搬するだけ」のクルマには、また違った開発過程が必要であろう。やはり自動運転でのレースも考えるべきかもしれない。

 しかし、地球温暖化は目の前に迫っている。もうDIN重量1トン以上の車両を作ってはいけないと規制すべき時代かもしれない。EVでも発電の問題が残っており、必ずしもCO2削減にならないことも考えるべきであろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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