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5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (22)
過日、某大手流通のPB商品のネーミングを請けた時の話です。商品はリカバリーウェア。「着用して疲労を取る」という画期的なアンダーウェアでした。鉱石が練り込まれた特殊繊維が体熱を吸収し、それを赤外線として人体へ放射することで、血行を促し、筋肉疲労を軽減し、全身の疲労回復へと作用する仕組みとなっています。
【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (21)
すでに違う品名で販売中でしたが、諸事情で名称変更したいという申し入れでした。一般医療機器の認可前で効果効能を謳えないという条件も付いてきました。
他銘と比べ、質もコスパも圧倒的であるにも関わらず、販売数は芳しくありませんでした。そこで私は3カ所の売り場を視察し、問題点を探りました。下記が結果です。
(1)セルフサービスを徹底した販売フロア。商品スペックの詳細を説明できる案内スタッフがゼロ。
(2)レジ係まで商品を持って行き、商品内容を訊いたが一切説明できない。
(3)現行品のパッケージデザイン、ネーミングは共に情報不足過ぎて正体不明。無効果な「ただの部屋着」に見える。
(4)広告出稿が全く無い。「売り場」だけでの勝負になる。
(5)医薬品医療機器等法に基づいた許可が取れておらず、効能表現を限界まで攻めていない。
売り場の人的リストラは理解できる。しかし、それによって、売る側がショッパー(購入者)とのコミュニケーションを断絶してしまっては無意味です。私は、この問題点を強調したプレゼンをしました。
■(24)ネーミングでパッケージを「広告メディア化」し、売り場で確実にキャッチする
「売り場に商品説明できる販売員を配置できないのならば、商品自身にベネフィットを語らせるべきです。特殊繊維●●●●●は生活者に全く認知されていません。よって、提供価値ワードを圧倒的に目立たせたパッケージにして、商品自身に『広告の役割』を担わせましょう。このデザイン戦略をもとにネーミングを提案します。私は今ある材料でなんとか売りに繋げたいと考えています」
このようにクライアントにプレゼンしたのです。売り場では、「提供価値を伝えるネーミングが大きく記載された商品パッケージ」が同時に「広告ツール」としても機能するべきだと。
売り場において、広告投下という援護射撃の無い商品はまさにショッパー(購入者)との1対1の勝負になります。その時、商品が何を訴えていて、どのような見え方をすれば良いのか。販売員が不在でも、「効きそうだな…」と納得させる一文のキャッチコピー的ネーミングをパッケージ内に撃ち込みさえすれば、あとはレジまでショッパーがそれを運んで来てくれると考えました。
コピーライターはどんな売り場だろうと、現場の状況とショッパーの関係から戦略を立ててネーミング作業に入っていきます。あとは、医薬品医療機器等法と闘いながら、購入意欲を高める最適解(ネーミング)を探っていくだけです。
ネーミング案は、売り場でのコミュニケーションが活性化することを想像して作成していきます。たとえば、パッケージに書かれたネーミングから繊維の構造やベネフィットが伝わったとする。そのクオリティーと効果に感づいたお客様から販売員に対し、「繊維●●●●●って何ですか?」「鉱石ってどう効くんですか?」という質問トークが始まる。その頻度が増えていけば、店側としては販売員に商品知識を叩き込むほかありません。このように、売る側のコミュニケーションの改善にも繋がっていくのです。
【鉱石を含んだ繊維●●●●●。広がるリラックス。】
入稿ギリギリまで粘って最終的にこうなりました。様々なハードルを乗り越えたから、これがベストアンサーだと言い切るのはコピーライターとして実にカッコ悪い。まだ、やりようがあったはずです。商品からショッパーに語りかけてくる。それが強いネーミングであり、売れるネーミング。そこを忘れずに考え続けていきたいと思っています。
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