奈良先端大、深層学習用いた短時間・高精度なCT画像認識システム開発 実用レベルに

2019年12月16日 17:52

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図1: 典型的な入力データと認識結果。(画像: 奈良先端科学技術大学院大学の発表資料より)

図1: 典型的な入力データと認識結果。(画像: 奈良先端科学技術大学院大学の発表資料より)[写真拡大]

  • 図2: 図1による20例の実験での誤差分布。左が従来法で右が今回開発された方法による結果。それぞれ、縦軸が異なる患者、横軸が異なる筋肉に対応しており、青が小さい誤差、緑、黄、赤となるにつれ、大きな誤差を表す。実用精度の目安となる1mm以下の平均誤差を達成している。

 深層学習による画像認識は、様々な分野での応用に向けた開発が進められている。医学やスポーツ科学の分野においても、画像認識はその進歩に欠かせない技術である。しかし、解析にかかる時間や誤差が画像認識システムを導入する上での課題とされてきた。そんな中、奈良先端科学技術大学院大学は13日、3次元CT画像から深層学習を用いて、精度の高い認識を行うシステムを開発したと発表した。

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 奈良先端科学技術大学院大学が開発した画像認識システムは、3次元CT画像から筋骨格を構成する筋肉や骨を個別に素早く高精度で認識するものである。構成する筋肉は19種類、骨は3種類と多いため、画像認識には多くのデータを用いて深層学習を行う必要があった。深層学習によってデータを蓄積し、自動的に学習することで画像の認識誤差や計算時間を大幅に削減することに成功した。

 具体的には、画像の認識誤差が1ミリメートル以下、計算時間が骨盤から膝までのCT画像に5分と、実用に十分堪え得るレベルまで到達している。しかも、様々な応用先に適用可能なシステムであるという点において、非常に意義が大きいものである。

 また今回の研究成果の特徴は、認識結果に対する「確信度」を同時に出力し、実際の認識制度と高い相関を持つことが示せた点にある。確信度というのは、機械がどの程度自信を持って認識したかの度合いを示す値である。深層学習を用いた分析手法はブラックボックスで、結果の根拠や信頼性に疑問を呈する声も多いが、確信度を出力することでその懸念も軽減できる。さらに、確信度の低い箇所に関しては追加で機械に学習させることで改善できることも確認されている。

 これらの研究成果は、医学の診断やスポーツ科学において有効な指標を提供する足掛かりとなり得る。特に、疾患の進行や治療による回復など、様々な要素が関連してくる分野においてその解釈の一助となる技術である。

今回の研究成果は、9月10日付のIEEE Transactions on Medical Imaging誌のオンライン版に掲載されている。

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